第二話:目にゴミが…。

前書き

目にゴミが入っちゃった。

『映画、行こ!』
『ハルちゃんが好きだから』
『えーじゃ、俺もー』

 昨日の工藤君の台詞が頭の中をグルグルと回ってる……。
 だって、全く世界の違う人だと思ってたから……。好きとかそういう対象に見てなかったし……。

「はぁ……」

 これでもう、何度ため息をついたことか。

 教室で何となく見た時計の針が、三時十五分を指そうとしていた。もうすぐあのひつこいチャイムが鳴リ始める……そう、もうすぐ、授業が終わる。
 工藤君は相変わらずで、クラスの子達と何やら楽しそうに話しては先生に注意されていた。

 私はというと、何も変わらない……ううん。実は昨日から、何だか変な感じです。

 ……工藤君はただふざけていただけかもしれない。

 ……でもね、

 キーンコーンカーンコーン……エンドレス。チャイムが鳴き始める。今回のチャイムはかなり長い。

 しばらく経って、チャイムは突然鳴くのが疲れたかのようにゴホッと中途半端に鳴き止んだ。どうやら、校長が口で言っていたようだ。たまにあるんだよね、この学校。チャイム代わりにサイレンで始まったり、天童よ○みの演歌で始まったり、人妻の喘ぎ声で始まったり、音の宝庫。……そんなことは今はどうでも良かったんだわ。

 どうでしょうか?
 意識し始めると止まりません。

 でも私は工藤君のことをあまり知らないのです。

 映画も結局、断ってしまったし……って、ピンク映画なんて誰が観るっていうんだ!?
 工藤君って……よくわからない……。

 お昼休みの時……。

『ごめん。土曜は用事があって映画行けないや』

 別に用事は無かったけど……私は何となく断ってしまった。

『え~映画ダメなんだ~。そっかー残念! せっかくすっごいやつ観れたのに。んじゃあこのチケット誰かにあげよっか。あ、そこの彼女!』

 工藤君は思ったよりあっさりしてて、持ってたチケットを近くを通った三年生の女の先輩にポンと渡した。

『え~  やだ~。工藤君ってばーこんなの観るつもりだったの~?』

 先輩は顔を赤くしてニヤニヤしながらチケットを受け取る。

『先輩にあげますよ。かなりの大作らしいんで、彼氏とどうぞ!』

 工藤君は明るく得意の笑顔を振舞う。

『彼氏居ないんだけどー……っつーかこれ観たんだよね~。あの脱がせ方が私的ツボなのよね~あと、あの機器は名器ね! あれ使いこなせたら女は男に従うしかないってね! せっかくだからもっかいオジサマ探して行くかー』

 先輩が身振り手振りしながら工藤君に話しかける。

『そうなんだー。そんな良いんだ?』
『かなりね。観てるだけで身体が疼くわよ』

『をを……そうなんすか。ちょっと惜しい気もするけどいーや』
『じゃ、ありがたく 

 そう言って先輩はにっこにっこしながらスキップして去っていった。一体、どんな映画だったんだろう……。

『…………?』

 あれ? 工藤君が私を見ている?

『どうしたのハルちゃん?』
『あ、いや、どんな映画だったのかな~って……私映画とか疎くて……』

『あ~。SF映画だよ』
『SFって……どういうお話?』

『う~ん……なんだっけな……聞いた話じゃ近未来の機械を支配する支配者が女の子達を次から次へと肉奴隷にして、最後はみんながその支配者にメロメロになるって話らしいよ』

 は?

 今何て言った? ニクドレイ? 何……それ?

『映像がすごくってさ~CG使って空中で3P4P……なんたらかんたら』

 彼の話は続く。

 さんぴぃよんぴぃ……。そっか……そうなのね。

 …………断って良かった……。

 ただの、ピンク映画じゃんか……。ってゆーか十八歳未満は入れないんじゃ?
 ……そうじゃなくて……何でその映画に私を誘ったの? 工藤君……。

 本当、工藤君がよくわからない。

「ハルちゃーん 

 授業が終わって、私が帰ろうと廊下に出ると、工藤君が私の名前を呼んで駆け寄ってくる。

「痛っ」

 突然に右目に傷みを感じる。

 いたたた……。
 目にゴミが入ってしまったみたい。

「いたた……」

 私がメガネを外して目を擦ろうとすると、

「目にゴミでも入った? 見せてごらんよ取ったげるから

 と、目を擦ろうとした私の手を止める。

「え? いいよ自分で取る!」

 目のゴミくらい自分で取れる。擦れば。

「何で? 見えないんだろ? 遠慮すんなって」
「でも私……」

 あまり、人に迷惑掛けるの好きじゃないから……。そう思って、躊躇していると、

「いいから、ホラ見せてみ」

 そういう彼に、

「じゃ……ごめん……――アリガト~」

 と私はゴミを取ってもらおうと工藤くんを見つめた。

「! ……あ……」

 工藤くんは私の顔を見た途端何かに驚いたように声を上げた。

「ん?」

 はっきり言って私の目の前の工藤君の顔は殆どよく見えないぼやけたような……輪郭もまるではっきりしていない。私の顔に何か変なものでもくっついていたっけ? などと思っていたら、

「ハルちゃん!!」

 先程よりもより大きな声で私の名を呼んだ。

「?」

 やっぱ、顔に変なもんでもくっついているのかな~?

「コンタクトにしない?」

 工藤君の言葉の意味がわからず、

「はぁ?」

 とまた訊き返した。

「あと髪型も変えてみてさ~、服も~。あ、ゴミもう取れてたみたいだよ」

 ユラユラと工藤君の顔が揺れる。一体どんな顔して言ってるのかまるでわからない。どういう意味なんだろう? 私の目に映る彼の顔だと理解に苦しむわ……。

 ただ言えることは。

「ムリィー。お金ないしー」

 私の家はあまり裕福ではなくて、むしろ貧乏。だからコンタクトレンズなんて買う余裕は全くない。私の視力は0.000001。殆ど目は見えない。ってゆうか、これ失明してない? 状態。愛用の渦巻きメガネでやっと0.5まで回復するの。メガネでさえお金が掛かるのに、コンタクトなんてもってのほか。

「そんなの心配しなくていいよ!! 俺が出すから!!」

 必死な声が聞こえるけど、目の前の工藤くんは相変わらずボヤボヤ~ンとしてる。何でそんなこと工藤君がしてくれるわけ? わかんないよ。

「大体!! なんで工藤君私に構うのよ!!」

 メガネッ娘の冴えない私を構って何の得があるっていうの?

「ユーリ」

 彼が私の方を見ながら自分の名前を言う。心地良く通る声変わりを済ませた
中低音の声音。

「は?」

 何だろ……ドキドキする……ああ……もう心臓が……。

「ユーリって呼んで 

 ユラユラボヤボヤしている工藤君の口の両端がきゅ~っと上がるのがわかる。

「ユーリ!? そんなっ!! 呼び捨てにしろっていうの!?」

 ぺしっぺしっ

 恥ずかしさのあまり私は冗談として受け流そうと、工藤君の肩を軽く叩いた。

 つるつる……という感触が手に伝わる。

 …………?

 これ、肩?
 何だか感触が……人肌っぽいけど……?

「ハルちゃん俺こっち……それ、校長だよ」

「え?」

 私は慌ててメガネを掛けた。

 はぅ!?

「小山ハルさん……」

 目の前につるつるのバーコード頭の校長先生が冷汗を流しながら私を見ていた。

「ご、ごめんなさい……校長先生……」

 ――それから、どうやって帰ったのか記憶にない。

 とにかく、ドキドキして……。

 ……心臓が……

 なんか変です。

to be continued…

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後書き

 以上スペースカプセル☆一巻を文字に起こしたお話でした。もう古すぎて後書きとか、語ることなんもないや(汗)

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