第三話:付き合うきっかけ

前書き

付き合うきっかけってこんなものですか?

 あれから、何もないまま、何日か過ぎました。工藤君は相変わらずにこにこしてて、沢山の人に囲まれてる。現在の季節は……初夏。

 だけど、心は春?

 恋とまでは呼べないけど、少し気になり始めたといえば、そうかもしれない。けど、工藤君の態度にあんまり変化はないようで、やっぱりからかわれてるのかな? ……なんて思うときがある。

 でも、クラスで仲のいい人なんてあんまり居ないから、“友達”として考えたらすごくうれしいことだと思ってるんだ。前から本忘れたら貸してくれたり、物飛んで来たら庇ってくれたり、寝てたら放課後上着掛けてくれたり。何て優しい人なんだろうって。きっとみんなに優しいから学校でも人気あるんだ。

 ……そう思ってたんだ。
 だから、手の届かない人だって。

 ある日の放課後、私は掃除当番だったので掃除をしていました。ご丁寧に、他のみんなは誰一人残っていません。

『小山よろしくなー!』
『ごめーん小山さん私今日用事があって』
『オレ部活が……』
『お前は掃除当番の鏡だ!!』

 みんなの自分勝手な声が耳に残ってる。なんて、無責任なの?

「でも、ま、いっか」

 別に部活やってるわけでもないし、どうせ、家でも一人暮らしだからやってることだしね。
 そう思って黙々と箒で床を掃く。机の移動なんて面倒なことはしない。そこまで私は真面目じゃないよ。
 サッサッサッと、
 埃と砂をかき集め、ちりとりで掬ってゴミ箱に入れる。

「ふ~……終わった。適当だけど……いいよね?」

 なんて独り言を言いながらゴミ箱のゴミをゴミ置き場まで捨てに行った。

「掃除も終わったし……帰ろっと」

 教室に戻って来ると、やっぱり誰も居なくて、私は自分のカバンに手をやった。
 すると後ろから、

「ハールちゃん 

 明るいトーンの聞き慣れた声が耳に届く。
 この声は……。
 なんて思っていると、

「あ・いたいた  掃除終わった?」

 にっこにこして私の前に彼はしゃがみ込んだ。

「……工藤君……あ……えっとユーリ?」

 あなたも掃除当番だったでしょうが! という突っ込みをしようかと思ったけど、言う前に工藤君……ユーリは口を開いて、私の次の台詞を妨げた。

「あ・うれしーなー  名前で呼んでくれて」

 その言葉で、満面の笑みを浮かべるユーリの顔に、私は自分の言葉を飲み込んでしまう。

 ……なんだかリズムが崩れるような気がするぅ。

「……もう帰るのよ、何か用?」
「うん」

 ユーリが即答すると、その時、窓から爽やかな風が私のスカートを靡かせた。

「……お……」

 スカートは捲くれ上がらないものの、ユーリは黙ってじーっと私の足を見つめる。

「ユーリ?」
「いい足だ~ 

「え?」

 ユーリは聞こえるか聞こえないかの小さな声でそう言って、今度は私の胸元をじーっと見つめ始める。

「ちょっと……ドコ見てんの? …………」

 ユーリってわからない……何なんだろう? そう思い始めて、

「ふむ…………(88はあるな……いいカタチだ…… )」
「ユーリ?」

 ユーリの目は明らかに私の胸を捉えていた。まるで、野獣のような……それでいて厳しい目……。何でそんな厳しい目付きで私の胸を見つめるの?

 もしや、乳ガンかも!? ……でも、ユーリは医者じゃないし……そんな頭良くもないはずだし…… (←酷い)
 そんな考えが頭を過ぎってたら、

「――ふぅ。やっぱりハルちゃんしか居ないな」

 ユーリはため息を一つついて、立ち上がる。

「……何が?」

 と私がユーリの行動をじっと見ていると、ユーリはスッと私のメガネを外した。

「それ取ると何も見えんのに……」

 メガネを外されると途端にユーリの顔がぼやける。

「俺と付き合って」

「え……」

 たった、そのひとことで私と彼は付き合うことになった。

「ハルちゃんしか居ないんだ」

 ぱりん

「ぱりん?」

 ユーリの言葉のすぐ後に、何かが割れる音がした。

「目は俺が治してあげるから大丈夫」
「え?」

 ユーリって眼科医だったの? なんて聞くほどバカではありませんが、ユーリのその言葉の意味を、私は後に知ることになるのです。

to be continued…

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後書き

 以上スペースカプセル☆一巻を文字に起こしたお話でした。もう古すぎて後書きとか、語ることなんもないや(汗)

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