贖いの翼・銀の誓言 二片:オリーブと悪戯④ フェインSide ★

「ハァッ……ハッ……ッ……ウィニエルっ、今日は中でも……いいか?」

 ウィニエルに一応断りを入れると、一際激しく奥を突く。

「ぁっ……だ、……はぁぅ!!」

 ウィニエルは駄目だと、いつも言う。
 今も駄目だと言おうとしたんだろうが、俺はそれを言わせないよう仕向けてしまう。
 これまでの何度かは彼女の言うことを素直に聞いていたが、たまには引き下がれないときもある。

 彼女の腕も、秘部もこんなに俺に絡み付いて放そうとしないのに、言葉だけ、何故俺から逃れようとするのか、理解に苦しむ。
 子供がまた出来でもしたらと心配なんだろうが、出来たら産めばいいんだ。
 俺はその責任も、育児も全部喜んで引き受ける気があるのだから。

「……っ……!」

 尿道の奥から精子が込み上げて来るのがわかる。
 あともう少ししたら、俺も果ててしまう。

「俺も……も、もう……っ……!」
「ふぇっ、ふぇぃんっ……ら……めぇ……っ……!」

 俺の射精がもうすぐだとわかるのか、ウィニエルが涙ぐんで、訴える。

 だが、

「……ぁ……ぁあっ……!! あっ……うっ……!!」

 もう、今更外に出すことなどできないまま、俺は絶頂を迎えてしまった。
 数回射精に合わせるように、“うっ、ぅっ”と息を詰まらせるように声を発しながら、その声の数だけ、ゆっくりと強くウィニエルを突き上げる。

「……っ……ぁぅ……」

 ウィニエルはやっと終わった激しい動きから開放された安堵の表情と、中に出され困った表情の綯い交ぜの複雑な顔をすると、
 “はぁ、はぁ”と、肩で息をしてからその呼吸を次第に整えていく。

「……はぁ……はぁ……」

 俺も全力疾走し終えたように、肩で息をして、しばらくは何も話せなかった。

「……もぅ……フェインは……ダメって知ってるはずなのに……」
「はぁ……はぁ……」

 未だ呼吸の整わない俺を、既に普段通りの呼吸に戻っているウィニエルが優しく包み込むように抱きしめてくれる。

「……はぁ……すまな……った……つい……はぁ……はぁ」

 俺も、応えるようにウィニエルの背に腕を回した。

「……こども、できちゃいますよ?」
「……かま……いさ……はぁ……はーっ……」

 二人で抱きしめ合って、会話する。
 あれ程早かった呼吸が少しずつ落ち着いてくる。

「……構わないんですか?」
「……ああ、構わない。出来たら産めばいい。責任は取る」

 俺は彼女から接がれ、縮んだ自身を抜き去るとポケットからハンカチを出して、先を軽く拭いて下着の中へとそれを戻し、彼女の秘部から零れる白濁した精子を優しく拭う。

 すると、

「ん……」

 ウィニエルの女性器がきゅっと締まった気がした。

 それから、ズボンのファスナーを閉じて、彼女にも下着を穿かせてスカートを元に戻すと、無言でウィニエルの手を引いてテーブルから降ろす。
 そして、食堂続きの暖炉のある絨毯の敷かれた居間に移動する。

 二人で赤々と燃える炎の暖炉の前に腰を下ろすと、俺は彼女の肩を抱きしめて、先程の会話の続きをする。
 情事の後の、まったりとした時間。
 射精後の脱力感からか、酷く冷静に物事が考えられる。

 今の俺は子供が欲しいのかもしれない。
 自分の年齢や彼女の年齢を考えても、早めに作っておいた方がいいと思うし、
 新たに子供が出来たら、ウィニエルは俺のプロポーズを受けてくれるんじゃないかと思ってさえいる。

 今はもう平和なんだし、何も恐れることなんてないだろう?
 そうは思ったが、どうやらウィニエルは違うようで……

「子供を作るのは嫌か? 俺なら、大丈夫だぞ?」
「……でも……」

「ん? 何か気になることでもあるのか?」

 視線を交わせるように、首を傾げ彼女の表情を覗き見る。
 目が合うと、ウィニエルが口を開いた。

「……いえ……ミカエル様が子供はもう作るなって……」

 ミカエル様、か……。
 ウィニエルの親みたいなものが、何だってそんなことを。

「? ……どういうことだ? ……君はもう人間なのだろう?」
「はい……そうなんですけど……そんなことをちらっと言われて……」

 ちらっと、って。
 天使の所為で俺はいつも我慢させられてきたのか?

 つまり、ウィニエル自身は別に中に出されるのが嫌というわけじゃないってことだ。
 子供が出来てもいいとも思っている。
 親代わりの天使だから娘の身体を心配してそんなことを?

 なら、

「まさか、君の身体はどこか悪いのか?」
「いえ! 私は健康そのものです。健康だけが取り得みたいなものですし、そりゃ、昔は精神的に病んでた時期もありましたけど、今はそんなこともないですし」

 俺はまさかと思いつつ、彼女に訊ねたものの、それはすぐに否定されてしまう。

「なら、何で……」

 面白くない。

 ウィニエルはもう俺のものなのに、何故、そこに親代わりではあるが、赤の他人の、しかも‘天使’が、‘人間’になった彼女に干渉する?
 俺とウィニエルの関係だってとっくに知ってるはずで、遅かれ早かれ結婚するつもりでいるのに、だ。

 結婚したら、子供だって、もう一人くらい欲しい。
 フィンだって、兄弟がいた方がいいに決まってる。

 そこに天使が干渉するのはおかしいだろう?

 部下の天使に命じて俺に世界を救わせておいて、俺が不甲斐なかったことは事実だが、一度は俺から彼女を遠ざけ天界に戻し、挙句、身重の彼女を地上に置いて去っておいて、子供を産んだら何事もなかったように会いに来て、俺と彼女が再会してからもまだ来るらしいじゃないか。

 そしてさらに、俺達に干渉か。

 全く、酷い天使もいたもんだ。
 だが、どういう意図があって、そんなことを?

 俺は腹を立てるも、天使の言葉だけに、少し気になってしまう自分がいるのを自覚していた。

「……私が気にしすぎなだけかもしれません・・・本当に、ちらっと言われただけなので」
「……そうか……」

 確かに、ウィニエルの気にしすぎの所為かもしれない。
 昔から彼女の心配性は度を越すことがある。
 隣のウィニエルを見てみれば、肌は瑞々しくて、瞳も以前と変わらないエメラルドのそれだ。
 輝いて活動的な生命力に溢れている。

「……それに今日は安全日だから、多分、大丈夫だと思います」
「……ふぅん」

 やはり気にしているのか、安全日などと口にする。
 それは性交をし、子宮内に射精しても受精しない日のことだが……、昔のウィニエルは性に疎くて、そんな言葉、知りもしなかったのにな。
 少し、寂しさを覚えつつ、さすがに子供を産んだだけのことはある。
 色々と勉強して大人になったんだな。

 と、

 感心してる場合じゃない。

 俺は、その性に疎い彼女に散々酷いことをしてきたわけだ。
 強姦まがいなこともしたな……。

 思い出すと、苦笑してしまう。
 セレニスを愛してるのに、ウィニエルを抱いていたのだから。

 それは今もか。

 俺は、最低な男なんだ。

 その最低男をウィニエルは受け入れてくれる。
 俺が何をしても許し、慈しんでくれる。

 いつも。
 どんなときでも。

 俺達の距離が長いときも、短いときも、それだけは変わらなかった。

「あ、そういえばフェイン」

 ウィニエルが何か思い出したように声を発した。

「何だ?」

「中に入っていたの、何だったんですか? もう、出ちゃってますよね?」
「あ、ああ、あれか。俺が入る前に床に落ちたよ」

 ウィニエルは俺を見上げて尋ねると、ちょっと待っててくださいと告げて、テーブルの下に視線をうろつかせる。

「え? ……やだっ……オリーブ!? 食べ物を粗末にしちゃダメですよ!」
「…………ああ、そうだな、ごめんごめん」

 彼女が床に濡れて冷たくなったオリーブの実を見つけると、それを拾って、台所へ掛けていく。
 俺は座ったまま後ろを振り返り、テーブルの方を向いて、気まずく笑った。
 ウィニエルはすぐに台所から戻ってくると、雑巾を手にして、濡れた床をその雑巾で拭いたのだった。

「……でも、ちょっと気持ち良かった……カモ……」

 使い終わった雑巾を再び台所に戻してから、彼女はまた俺の隣に腰掛けて照れたように告げる。

「ん? ……ははは、君は快楽に弱いからな。よく、耐えられたもんだよ」

 ウィニエルが嫌がっていただけではないとわかって、俺は安堵する。
 彼女が嫌だというわけないとは思っていたが、もし心底嫌がっていたら不味かったかなと多少は思っていたわけで。

「すごく、辛かったんですよ? 声出ちゃいそうで、バレたらって思ったら嫌な汗が出てきてしまって」
「ああ、すごく、艶っぽい顔をしてた。君が感じている間中、君が欲しくなってたまらなかった」

「もう、フェイン……とっても恥ずかしかったんですからね」

 からかうように俺が褒めると、ウィニエルの頬が膨らんだ。


「……それに、こんなところでするなんて、思わなかった……」

 一瞬だけ俺達のすぐ後ろのテーブルに視線を投げてから、今更ながらに頬を赤く染めた。

「…………プッ、ウィニエル、耳まで真っ赤だぞ?」
「だ、だって……」

「ウィニエル」

 未だに恥じらう彼女が可愛いくて、俺は静かに目蓋を閉じて唇を重ねる。
 俺が目蓋を閉じる瞬間、ウィニエルも合わせるように瞳を閉じた。

「…………」

 こんな風に口付けが出来るようになったのは、再会後。
 静寂が辺りを包んで、俺達を祝福する。

 そういや、哀しいキスもあった。

 天界に還ると言って、お別れのキスをした。
 まさか、天界に還る理由が俺だったなんて思いもしなかった。

「……フェイン、愛しています」
「ああ、俺もだ」

 唇が離れると、柔らかな笑顔で互いに微笑み合う。

「……はー、気持ち良かった~。あ、二人共そこに居たの。お風呂上がったよー。次どうぞ~」
「どうぞ~」

 背後から、風呂上りのアイリーンと、フィンが上機嫌で俺達に話し掛けて、台所に消える。

「はー、あつあつ~。ちょっとのぼせたかな? ほら、フィン水飲みな」
「うん! ゴクゴクッ」

 台所の方から、二人の会話が聞こえる。

「お風呂、フェイン先にどうぞ。私、フィンを寝せてから入りますから」

 ウィニエルはアイリーンに言われた通り、俺に風呂に入るよう促す。

「ん? あ、ああ……」

 俺はそれじゃあそうしようと思い、立ち上がろうとするとアイリーンがやってきて、こんなことを言った。

「フィンなら私と一緒に寝るからいいよー。一緒にお風呂入ったら?」

「「え?」」

 俺とウィニエルはアイリーンの言葉に目を見合わせた。

「なーんてね☆」

 とアイリーンは悪戯に舌を出す。

 次の瞬間、

「アイリーン!!」

 ウィニエルが慌てて立ち上がってアイリーンの傍まで向かうと、二人でなにやらひそひそと話し始めた。

「え……いや、だってさ、次会うの来月くらいになっちゃうんでしょ? だったらなるべく一緒に居たいんじゃないかと思ってさ~」
「でもっ……一緒に入るだなんて恥ずかしくて」

「エー……今更じゃないのぉ?」
「……そ、そりゃぁ、そうかも……しれませんケド……」

 二人の声が小さくて、俺の居る場所からはよく聞き取れなかったが、アイリーンの悪戯な笑顔と、ウィニエルの赤い顔で大体の予想はついていた。

 途中でフィンがやってきて、

「ねーねーママ。僕、アイリーンお姉ちゃんにご本読んでもらうんだよ」
「ね~。 ……そういうわけだからさ、私達はもう寝ますー! あとは二人で好きにして頂戴」

 そう告げると、フィンを引き連れ、さっさと自分の寝室に引き取ってしまった。

「……アイリーン……」

 ウィニエルがため息混じりにアイリーンの名を呼ぶ。

 俺は腰を上げて、アイリーン達を見送るウィニエルの隣に立つと、彼女の肩を引き寄せた。

「……気を遣わせてしまったようだな」
「はい……」

 アイリーンが俺のことを以前男として好きだったことを、彼女は知っている。
 だからなのか、まだアイリーンが俺のことを想っていると考えているのだろう、アイリーンの前では俺と親密な行動は控えている気がする。

 アイリーンなら既に俺を吹っ切っている。
 そのことを俺は知っている。

 ……いや、正確にはそうであって欲しいと願っている。
 俺には、応えられない想いだから。

「……二人共寝たことだし……一緒に入るか」

「え? あ、は、はい……」

 頬を赤らめるウィニエルの手を引いて、俺達はバスルームへと向かった。

to be continued…

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後書き

 こんにちはー! 皆様お元気ですか? 私は元気で平常運転です。

 エロが思いの外長くなってしまって途中で切り上げました。まだまだ続きそうな悪寒。
 ねちっこいな、フェイン!(笑)

 書いててフェインとウィニエルがラブラブだなーと、初めて思った。
 本編中も番外編も何かあんまりラブラブじゃなかったような気がするのです。連載中の当時、この二人はラブラブじゃなくてもいーやとか思ってたような気がする。
 身体から始まってる関係だし……。
 結構苦しい恋愛だったやうな。

 本編中のゲーム時間内まではウィニエルのほぼ片想い? のような。それ以降から再会まではフェインのターンん。
 お互い想いあってたけどすれ違ってたなー。再開後やっと気持ちがカチッとぴったり嵌った感じ。

 余談ですが、オリーブの花言葉は「平和」「知恵」だそうで。二人は今の所平和なひとときを過ごしております。
 しばらくはえちえち展開が続きそうですが、ストーリーもちゃんと進めていきますので、よろしくですー。

 頑張ります!

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