前書き
正勝×家光ということで新年一発目。
この二人、2021年1月1日UP分までそんな雰囲気はさっぱりです。それも当分の間さっぱり。
今後の展開は決まっていますが、こちらは番外編なので、さくっと書いてみた次第です。
正勝×家光がお好きな方向け……か、な?(含み有)
家光も今年は特にそれを深く痛感していた。
京都への上洛から戻って、数か月。
将軍の位に就いてからというもの、母秀忠の引継ぎに、新しい政策の試案を作成したり、老中達に振り回されながら、政をこなす日々。
そして、正室及び側室達との睦事も仕事の内、と割り切りながらも割り切れずにいるまま。
こなすことが多い毎日を慌ただしく過ごしていた。
今日は十二月三十一日大晦日、しかももう、夜も更けて次の年まであと僅か数刻である。
「……うーん……やっぱ、ここは違うよなぁ……」
家光は暗い部屋の中、薄ぼやけた灯りを頼りに、文机に向かって何やらノートのように糸で纏められた書類をチェックしていた。
元服した後に引っ越した部屋は広く、誰も居ない今はしんと静まり返っている。
寒いので防寒にと褞袍を羽織って、傍に置かれた火鉢の炭が時折パチッと音を鳴らしているのと、家光自身が捲る紙のカサカサという音だけが聞こえ、年の終わりをゆっくり過ごす余裕はなかった。
「……BGMが無いから、こう、気分が乗らないんだよなぁ。……歌うか」
家光は筆に墨を浸けながら、昔々前世でよく聞いていた曲を口ずさむ。
軽快なJ-POP、自然と身体がリズムを刻んで身体が揺れる。
「フンフーン……あー……なんだっけ、歌詞忘れたなぁ……はぁ、もう十八年も前だもんな忘れるわな」
調子良く途中まで歌っていたが、途中で躓くと頭をぽりぽりと掻きながら、家光は先程違うと言っていた箇所に印を付けた。
もう少しで、今日の分は終わりそう。
あと一息だと、両肩を上にに引き上げて、一気に脱力すると“ふぅ”と溜息が漏れた。
そんな時だった。
がたっ、こんこん。
襖に誰かの訪問を知らせる音が聞こえてくる。
『家光様、入っても宜しいですか?』
「あ、その声は正勝? いいけど……どうしたの? こんな夜遅く」
襖の向こう側で聞き慣れた正勝の声がしたので、家光は筆を置いて入室を許可したのだった。
「先程、前を通りました所、灯りが見えましたので、まだお仕事をされているのかと思いまして、お茶をお持ちしました」
「ありがとう、寒いから温かいの嬉しい!」
(まぁーお湯はここにあるんだけども)
家光が火鉢に目をやると、鉄瓶が中央に置かれ、そこから湯気が常に出ている。
そっと襖を開けた正勝の手には湯気の立った熱いお茶がお盆に載せられていたのだった。
「お茶菓子もどうかと思ったのですが、本日はあまりいいお菓子がございませんでした」
「今日はもうお腹いっぱいだから食べないし、構わないよ」
正勝が家光の傍にお茶を置くと、家光はそれを“あちち”と言いながら手にして、ふぅふぅと息を吹き掛けてから飲む。
「うん、あったまる~。これ、生姜湯?」
「はい、蜂蜜が少し入っています」
「うん、ほんのり甘い」
正勝の気遣いに家光はほっこりして、目元を緩めると、再び湯呑を傾けた。
「もう直ぐ夜四つ(夜十時~十一時)です。そろそろお休みになられませんと、明日のお勤めが辛くなりますよ?」
正勝は家光の顔色を見つつ、不安気な面持ちで様子を伺う。
(お風邪を召してはおられないだろうか?)
相変わらず心配症である。
「そうだね、もうちょっとで終わるから」
家光は湯呑をお盆に戻すと、再び纏められた書類をパラパラとめくり始めたのだった。
「うーん……」
家光は再び筆を手にするが、止まってしまう。
そして、空いている手で自身の肩を一揉みした。
「肩が凝っておられるのですか?」
「え? あ、うん、少しね」
(ぱいが重いんよ、ぱいがさ)
首を左右にゆっくりと傾けてから肩をゆっくり回すとごりごりと、音がする。
「肩、お揉み致しましょうか?」
「あ、そう? じゃあ、ちょっとお願いしようかな、悪いね」
正勝は家光の背後に回り両膝をつくと、家光の褞袍を少しずらして肩を揉み始める。
「あ……そこ、イイ……」
揉み始めてすぐに家光から艶っぽい甘い声が漏れて、火鉢の温かさの恩恵などほぼない部屋に白い吐息が舞う。
「……ず、随分凝ってらっしゃいますね、家光様」
家光の声が気持ち良さそうで、表情も何だかとろんとしている気がして正勝の心の臓がとくとくと早くなる。
「ああっ……ン……そこっ」
家光の声が更に甘くなって、肩を揉んでいるだけだというのに、正勝は何だかいけないことをしているような気分になってしまった。
正勝の手が家光の凝りを解すように、強くもなく弱くもない、程よい力加減で優しく動く。
「……っ、家光……様」
「ん……あっ……」
次第に正勝は肩揉みでずれてきた浴衣の衿の中へと手を忍ばせていく。
「んん……何やって……っあ」
正勝の手が、家光の柔らかく温かな饅頭に触れその先端を探るように撫でて、目当ての芽を優しく摘まんだ。
「あぅっ! や……正勝……何やって……んぁっ」
摘まんだ芽をやわやわと親指と人差し指で挟んでこねる。
そして、項にそっと唇を落とすと、家光がびくりと身体を震わせた。
「正勝……おっぱい弄っちゃいやぁ……」
家光の目元に涙が浮かぶ。
不意に家光は後ろを振り返り、正勝の腕を取って引き寄せると首元に手を回して口付けをしてくる。
「んっ、家光様っ! んん……はぁ……」
「んはぁ……まさっ……んちゅっ、ちゅぱ……」
ちゅ、れろ、れろれろ、ぴちゃり、水音が静かな部屋に響く。
家光が縋るような体制だったこともあり、正勝は家光と口付けを交わしながら彼女の背と腿に腕を差し入れて身体を抱き上げる。
「うわぁっ!? な、何?」
「……褥に参りましょう」
家光は驚いて唇を放して目を瞬かせる。
軽々と抱き上げられて、正勝が耳元にそっと囁いてくるので、掛かった熱い吐息がくすぐったい。
「う、うん」
少し身を竦めてそう返事したのだった。
「……もう少しで、今年も終わります。どうか、本日は私とお過ごし願えませんか?」
正勝が家光を褥に運ぶと、そっと下ろして優しく微笑む。
「……う、ん? ……ん」
「一緒に年越しを迎えたいのです」
正勝の想いを知ってか知らずか、家光は正勝の袖を引いて、上目遣いで彼を見つめたのだった。
「……気持ちよく、して差し上げますね」
家光の態度を承諾と見做して、正勝は家光の浴衣の帯を解いていく。
「あ……寒っ……」
「すぐ、温かくなりますよ」
着物を開かれて、胸が露わになる。
その頂は寒さに凍えてきゅっと小さく縮んでおり、つんと立っていた。
下は自作のショーツ型褌を穿いているので、全て暴かれたわけではない。
僅かな灯りの暗い部屋で、家光の青白い肌には薄っすらと鳥肌が立っている。
かなり寒いのである。
「早く、して? 風邪引いちゃうよ」
「っ、はいっ」
少し不満気な、けれども強請るような甘えた顔で家光が催促すると、正勝は家光の首元に唇を添わせた。
ふぁっ、と家光の口から声が漏れる。
「んぁ……正勝がキスしてくれたとこから、温かくなってくる……不思議」
家光の口角が弧を描いて、優しく微笑む。
ちゅ、ちゅっちゅっ、と耳元、首筋、胸元、腹へと正勝は唇で啄んでいった。
「家光様、家光様……」
甘く家光の名を呼びながら正勝は先程とは逆に腹から胸元、首筋、耳元へと口付けをしながら戻って来た。
正勝に口付けられた箇所がじんわり温かくなって、家光は小さく声を上げる。
「はっ、あ……はぁっ……」
家光は自分の上に覆い被さる正勝の肩に腕を絡めて、耳元から頬にキスを落とす正勝の唇に自身の唇を重ね合わせる。
「んんっ、ちゅ、ちゅぱ、はぁ……」
舌が擦れ合い唾液が混ざり合うと、頭の奥が痺れてくる。
歯列をなぞられ、舌裏を舐められ、糸を引くのも構わないまま、夢中でそれを続けると唇から雫が零れ落ちる。
身体が熱くなってくると、家光は正勝の着物に手を掛けて脱がそうとするのだが、簡単に正勝の帯は外れなかった。
「……家光様? ……ああ、帯、外したいのですか?」
「……はぅ……」
正勝が口付けの合間、自分の帯に手を掛けたまま手を止める家光を不思議に思ったのか、色っぽく微笑むので家光は察しがいいなぁと頬を赤く染める。
「……待って下さいね」
そう言うと、正勝は家光を寝かせたまま彼女の腿辺りを跨いで、膝立ちして、帯を緩めてくれる。
「はい、どうぞ」
「え……」
脱がして下さい、と緩めた帯に家光の手を引いて乗せる。
「いいの?」
家光の返答に正勝は静かに頷いて、挑戦的な鋭い瞳で家光を射抜くと、家光が身体を起こした。
「っ……じゃあ、脱がすね」
家光が帯を引くと、あれほど固く結ばれていた帯がいとも簡単に解けて、正勝の衿が緩む。
緩んだ衿から均整の取れた胸板が覗くと、僅かな灯りに薄っすら割れた腹筋の陰影も見て取れて、家光の喉がこくりと小さく動いた。
下半身は褌をしているが、太腿もちらりと見えてこちらも筋肉質。
着やせするタイプだよねと、家光はぼぅっと正勝の身体を眺めていた。
「……御側室の方々とは違って、あまり、美しくはないと思います」
「ううん、そんなことないよ」
好きな女に見つめられ、正勝はどきどきしながらも、満足そうに家光から注がれる視線を照れからか受け流す。
「ん……正勝の匂い、好きだなぁ。落ち着くや」
家光がそっと、衿を両側掴んで正勝の胸元に顔を埋める。
「……家光様、落ち着いている場合ではありません」
「え? あっ!」
正勝は再び家光を褥に組み敷いて、その柔らかな胸に吸い付いた。
「ンンッ!」
びくびくと、家光の身体が跳ねる。
「んぁ……ふぁ……ンゥ……」
正勝の舌が家光の尖りを捏ねまわしたり、舐めまわしたり、吸われたりと忙しく愛撫されて、その度に家光の声が甘く溶けていく。
次第に正勝は家光のショーツ型褌に手を忍ばせる。
「あっ! やっ、そこは……!」
「……はぁ……家光様のここ、温かく湿っていますよ」
つんつんと、正勝の指が柔らかな肉襞を軽く突く。
「ひゃっ……や、やだ、そういうこと言わないで」
「はぁ……言いますよ、こんなに可愛らしい顔、見せられたら……」
家光の耳を啄んでから正勝が告げた言葉に、彼女の耳までが紅く染まり、瞳が潤う。
その瞳が自分を求めて来るようで、正勝は背中にぞくぞくとしたものが這いあがってくるのを感じていた。
「……家光様、寒くないですか?」
「はぁ……もう、寒くないよ……温かい」
正勝は窺うように訊ねながら、家光の濡れたそこを掬って手前にある小さな蕾を撫で上げる。
「……まだ、ですね?」
「ンァッ! んんっ……何言って……ふぅ……ぁ」
くちゅくちゅと、水音が家光の下肢の付け根から聞こえてくる。
「こんなに濡れて……ここも、立って……れろ……れろれろ」
正勝は嬉しそうに家光の双丘の片方に吸い付いて、再び舐め始めた。
「ア……ンッ!」
家光は正勝のしたいようにさせて、漏れてしまう声を自分の片手で必死に抑える。
「はぁ……はぁ……声、聞かせて下さい。たくさん……ちゅ……」
甘やかな声で家光の脳に響くように伝えて、正勝が唇で首元に吸い付くと、家光は大きな声をあげてしまう。
「あっ! んぁっ! く、くすぐッ……!」
くすぐったいのか家光の腕に鳥肌が立つと、胸の頂がくくくっ、と硬くなって主張してくるのを正勝の口と手が悪戯をして、そこを弄ってくる。
下も下で、正勝のもう片方の手の指がねっとりした粘液を絡めて、蕾横の肉と蕾を一緒に軽く押し潰すようにゆっくりと捏ねる。
すると、家光はその動きがどかしいのか、腰が微動してしまうのだった。
「ひぅ……や……っ、ウンッ」
「……ふふ、家光様、なんて愛らしい……腰、動いて……」
(もっと、良くして差し上げますね)
家光の反応が嬉しくて、正勝は目元を緩めて指の動きを速める。
蕾を強く潰さないように、あくまで優しく、捏ねまわす。
「あっ、ンンッ! いい……や、上手……っ、もう、イッちゃいそう」
ぞくぞくとした感覚が家光の背に這い上がって来る。
もう少ししたら、絶頂を迎えそう。
「もう? ……早いですよ、家光様」
「え……あっ!? ヤダッ!」
ちゅっ、と正勝は家光の頬にキスをすると、弄っていた蕾に加えて奥も一緒に弄り出す。
「やっ、ダメっ、これ、すぐイッちゃう!! やだやだやだーっ!!」
奥をぢゅぶぢゅぷと刺激され蕾も弄り倒されて、家光の腕が正勝の肩を掴む。
「いやっ、いやぁああああっっんんんーっ!!!」
ぶるぶると、家光の身体全身が震えると同時、正勝は家光の口を塞ぐようにして、自らの舌を差し込んで口付けを交わした。
ちゅ、ちゅぱ、れろれろ、と逃げ腰な家光のその舌を正勝が絡め取っていく。
すると観念したように家光も舌を動かして正勝に応えるように絡め合った。
正勝の指が動く度に“あっ、あっ”と声をあげながら、びくんびくんと身体が小刻みに揺れる。
「……はぁ……家光様、お慕いしております」
「んぁっ……」
一頻り余韻を楽しんだ後、ちゅ、ちゅ、と正勝は愛おしい家光の頬や耳に口付けを落とすと、家光が艶っぽい声を出したので、正勝は満足したように目元を緩めたのだった。
「……家光様、宜しいですか?」
「っ、うん……」
一度絶頂を迎えてぼぅっとした家光の目の前に、正勝は褌を外して熱く滾る塊に手を添えて、家光の濡れそぼったそこを目掛けてゆっくりと挿入しながら覆い被さった。
「あぁっ! やぁあああん!!」
家光の身体が再び、びくびくと震えて家光は正勝の肩を力なく掴む。
「っあ……痛くはないですか? (駄目だ、すぐ果てそうだ……!)」
「っ、ああっ、やっ、いっ、いいっ!」
正勝は狭く温かな部屋に招き入れられて、つい声を漏らすが、それでも愛しい女の反応が気になって訊ねてしまう。
けれどもそんな正勝の気遣いなど不要だとでも言うのか、家光は苦しそうに眉を顰めながらも気持ちいいと告げるのだった。
「ああっ、そこっ!」
ぐりぐりして、と家光が可愛くおねだりするので、正勝は抜けないように入口まで後退してからまた奥へと侵入していく。
「んっ、そこぉ!!」
家光がいい場所を探りながら正勝はゆっくり動いていたが、次第にたまらなくなって、速度をあげていく。
「あんっ、あんっああっ!」
自分に縋りつく家光の嬌声が耳にこびりついて、理性が消えてゆくと、正勝は激しく家光の奥を攻め立てたのだった。
そして、自分ももうすぐ、果ててしまいそう。
まだ挿入してから大した時間も経っていないのに。
「はぁっ、はぁっ、いえみ……さまっ、もう、もうっ……!」
「やんやんやんっ!!」
正勝もピークを迎えるのか、ぞくぞくした感覚が自身に集中していく。
「家光様っ、家光様っ、家光様っ!!」
「かつ……正勝っ……」
家光の名を何度も呼びながら、同じように何度も自身を奥に打ち付けた。
もう、今が絶頂!!
ってそんな時、突如怒気を帯びた家光の声が聞こえてくる。
「家光様っ! あああ……はっくしょん!!」
寒さにくしゃみ一つ。
「まーさーかーつー! こらぁーー!!」
「えっ!?」
はたと、我に返って目を開く。
すると、目の前には腰に手を宛てて不機嫌な様子で正勝を覗き込む家光の姿があった。
「何が“えっ!?”ですか。眠いならお茶なんて持ってこなくていいのに。そんな所で寝ないで部屋に戻ったら? 風邪引くよ」
家光は正勝から離れて再び文机に向かって筆を取ると仕事を始める。
なんと正勝は仕事をしている家光の背後で眠っていたのだった。
「……ゆ、夢かぁ……(とほほ……いい所だったのに……)」
正勝は身体を起こして額に手を宛てて“はぁ”と溜息を吐く。
「何の夢見てたの?」
「……あ、いえ……何でもないんです」
背中越しに訊ねられて、正勝は答えようとするが、自分に掛けられた家光の褞袍に何となく言えなくなって黙り込んでしまった。
夢の中のように積極的な自分にはまだなれそうもない。
「あー! やーっと終わった!!」
家光は筆を置くと、立ち上がる。
「あ、家光様、これ、すみませんでした。寒くはございませんか?」
「へーき! じゃあ、良いお年をね、正勝! 後始末頼んだ!」
家光は敬礼のように手を額に宛てて、サッと離す動作をして、部屋を出ていこうとする。
「え? ど、どちらに?」
「どちらにって、そりゃ、もちろん最愛の人に会いに行くに決まってるじゃない?」
にこにこと満面の笑みで家光が言うので、正勝の心臓はずきんと痛むのだった。
「あっ、ああ……そうですよね……」
「正勝、良いお年を」
ちゅっ!
家光は傷ついた顔をした正勝の額に口付けると、部屋を出て行った。
「……家光様……」
自分が慕う女性は思い通りにはいかない方だけど、やっぱり好きだなと改めて思うのだった。
end
後書き
以上、正勝の妄想話でした。実はちょっとネタバレ的なこと(?)も書いてあったりしましたが、いかがでしたでしょうか。
ラスト部分は投稿サイトにUP分から加筆・修正を掛けました。
キャラが多すぎるので、読んで下さってる方がどのキャラがお好きなのかはわからないけれど、初回は正勝さんということで書いてみました。