「……んっ……ああっ……!」 彼女の小さな手が彼女の髪を弄る俺の手を掴み、身体を大きく震わせる。 そして、その後小さく震えながら、彼女はもう片方の俺の手の動きを止めさせる。 その手を自分の胸の方へと抱くように引き寄せた。 俺は彼女の隣に横になる。 「……っ……フェイン……っ……」 彼女の秘部を弄っていた指には彼女の熱い液体が纏わり付き、白い湯気が立つ。 そして俺は無言のまま口角を上げて彼女の瞳を見つめながらその指を静かに舐め取った。 「……っ……くっ……」 彼女が引いたのがわかった。 俺の方を見る彼女の瞳から涙が枕に伝っていく。 「フェイン……っ……」 もう、やめて、 お願い、 変になりそう。 彼女は恥ずかしさからなのか、声にならない声で息を詰まらせながら涙を流した。 「……ウィニエル……」 俺は謝ろうなどと微塵も思わなかった。 何て声を掛けたらいいかもわからずに、ただ彼女の名前を呼んだ。 「……だ、大丈夫です……」 俺の声に彼女は安心したのか無理に笑ってみせる。 この笑顔がいけない。 君の全てがもう間違っている。 笑顔で大丈夫なんて卑怯な男に言うなど、バカな女だ、君は。 「……ああ、大丈夫そうだな」 俺は無表情で彼女の上に膝を立てて跨る。 「……フ、フェイン……?」 彼女は虫の息で呆然と俺の行動を見つめている。 俺はズボンのファスナーを外し、先程から窮屈で仕方がない下着から膨れ上がった欲情を外へと取り出す。 「……っ……あ、あの……」 それを直視出来ない彼女は手で自分の目を覆う。 君も何となくはわかっていただろう? こうなることはわかっていただろう? 今なら引き返せるかもしれない。 けれど俺はその選択権をとうの昔に放棄していた。 「……少し痛いかもしれないが……」 俺は彼女を見下ろしてそう伝えた。 「……は、はい……」 彼女は目を手で覆ったまま応える。 そして俺は彼女の脚を広げ、そそり立った自らの欲情に手を添えて彼女の花弁へと宛がえた。 俺と彼女が触れ合おうとする刹那、彼女の花弁は息を飲み込むそれのように深呼吸した。 これから起こることへの心構えなのだろうか。 それとも、俺を誘っている? そして、俺は彼女の中へとゆっくり侵入する。 「……ぅ……痛っ……」 案の定彼女は苦痛に顔を顰める。 そして、自然に瞳に涙が溢れてゆく。 「……っ……きついな……」 彼女の方も負けじと俺をきつく締め上げてくる。 俺も相当痛い。 まだ三分の一も入っていないのにこんなに狭くて奥まで入れるだろうかと心配になる程だ。 「……んーっ……フェインっ……フェインっ……」 彼女は痛みに耐える代わりに俺の名を呼んだ。 彼女の手が空を切り、俺を求める。 俺はそれに応えるように彼女の手を取り、俺の肩へと回してやった。 「……痛いか……?」 俺が訊ねると彼女は爪を立てないようにして俺の肩を強く掴む。 この辺は全く彼女らしい。 それとも気を遣う余裕があるとでもいうのだろうか? 「……っ……はい……」 徐々に自らの中に入って来る異物に彼女は侵入を拒み続けて、俺を締め上げていく。 「……ちゃんと掴まっていろ……っ……」 俺の顔も痛みに反応し、眉が強張った。 そして、痛みに耐えかね一旦動きを止める。 「……大丈夫ですか……?」 「……ああ……」 彼女は自分が痛いのに俺に気を遣う。 そんな健気な彼女を俺は汚したい。 愛しみでも憎しみでもない。 ただ、彼女を汚したい、その衝動に駆られる。 彼女の美しい顔を歪めたい、歪めた顔が見たい。 この欲求に尽きる。 だから俺も痛いことを彼女に悟られるわけにはいかなかった。 なんとなく、そういうのは格好悪いような気がしたからだ。 俺のエゴだ。 俺は君を支配したい。 弱さを見せるわけにはいかない。 あと、半分。 奥まで入ったら、俺は君を征服したことになる。 俺は再び侵入を進めた。 「……痛い……ううっ……」 俺の肩を掴む彼女の手に力が入る。 歯を食いしばっているのか、歯が擦れ合う音が耳元に聞える。 「……ウィニエル……」 俺は彼女を征服したかったが、彼女を傷つけようとは思っていなかった。 出来るだけ苦痛は与えないように気を遣っているつもりだった。 「……っ……フェ……イ……ンっ」 彼女の爪が俺の肩に食い込む。 爪を立てないようにと気を遣う余裕はもうないようだった。 肩の痛みと彼女から与えられる痛みに俺は我慢しきれず、最後は一気に捩じ込んでしまう。 「……んんーっ!!」 彼女は声にならない声で口を閉じて息んだ。 やっとのことで、俺は彼女の奥まで到達した。 彼女は抵抗することはなく顔を顰めて俺を受け止めていた。 そして、俺はそのまま動きを止める。 「……え……?」 彼女は動きを止めた俺に気付き、顰めた顔をほんの少し緩めた。 「……ウィニエル……」 「……フェイン……」 俺と彼女は繋がったまま互いに見つめ合う。 ウィニエルは痛みが多少和らいだのか安堵の表情を浮かべていた。 俺はその表情を見た後、ふとベッドのシーツに目をやった。 シーツには黒い染みが出来ている。 それは漆黒の色をしていたことから彼女の鮮血だとすぐに理解できた。 やはり彼女は初めてだったのだ。 だとすると、彼女のこの表情はやっと山を越えたという安堵感から来るものなのかもしれない。 ここまできて言うのもなんだが、正直俺の胸中は複雑だった。 いや、複雑というよりも理性が戻って来てしまったようだ。 セレニスへの愛を一瞬でも忘れていたなんて、どうかしていたんだ。 急にセレニスのことが頭を過ぎる。 彼女と何度もこうして身体を重ねたことを思い出してしまう。 それがウィニエルに失礼なことだとわかってはいても思い出してしまう。 けれども、こうして繋がっている彼女がこんなにも温かく、そして心地いいなんて。 俺は……。 ウィニエルは俺を黙って見つめていた。 思慮深い彼女のことだ、きっと今の俺をも見透かしているだろう。 「……あの……」 彼女は突然に表情を失い、無表情で俺に話し掛けてきた。 「……ん?」 ウィニエルは俺の気持ちを見透かしているわけではなかったようだ。 うわの空のそれとは違うが何か別のことを考えているような顔だった。 「……いえ……何でもないです。ちょっと思い出せそうだったので……」 何を? 俺が訊ねると、 ……それがわからないんです。 彼女は首を軽く横に振って、柔らかく微笑んだ。 「けれどフェインのお陰で思い出せるかもしれません」 それはいつもの淡々とした物言いだった。 こんな状況でいつもの彼女に戻ってしまうなんて、ありえない。 一体何を思い出そうとしているのだろう。 気になる所ではあるがいつまでもこのままというわけにもいかない。 手を引く? このまま進める? この期に及んで俺は迷った。 そして臆病な俺が突如現れ、俺は手を引くことにした。 「……ウィニエル……」 俺は静かに彼女の中から出てゆく。 途端彼女の柔らかく弾力のある肉癖は俺を愛しむように少しずつではあるが奥から奥から愛液を分泌し、俺の全てを絡めて逃がさないように巧みにきつく締め付けた。 俺の背中に小さな震えが走り始める。
to be continued…