贖いの翼 第二話:罪④ フェインside ★

「ぁんっ……」

 彼女の顔が再び苦痛に歪み、唇から艶っぽい声が紡がれる。
 男の性というものはどうしようもないなとつくづく思う。
 俺はその声で再び理性を失ってしまう。

 思考は止まり、彼女の俺を求めて放さない肩を掴む手に、俺は応えるようにゆっくりと入口ぎりぎりまで引き抜いて、またゆっくりと彼女の中へと侵入してゆく。

「あっ……フェインっ……」

 互いを襲っていた痛みも彼女の奥から溢れてくる愛液で次第に和らいでいく。

 俺の方の痛みはほぼ無くなっていた。
 痛みよりもむしろ快楽に近づきつつある。

「ウィニエルっ……」
「あっ……うっ……」

 少し、速度を速める。
 すると彼女がやはり痛そうにするので俺は彼女の顔色を伺いながらそれを繰り返した。
 だがそれでも無意識の内に速度は速くなってゆく。

「んんっ……! フ、フェインっ!!」

 彼女の爪が肩に食い込んで痛い。
 その所為か肩から腕に多少血が伝って来ていた。
 けれども下の心地良さは何事にも替え難い。
 俺は肩から流れる血を無視して夢中で彼女を求めた。

 それでも彼女を傷つけないように気を遣いながら。

「……ンンッ……あっ……あんっ……」

 彼女も思考が止まってしまっているのかもしれない。
 俺が出入りする度に少しずつ喘ぎ声が零れる。
 俺が彼女を抱き上げ、背を支えてやると顔を天井に向けた。

 頬は高揚し、唇からの雫が顎を伝って彼女の胸の谷間を伝っていく。
 翼は今にも飛び立つように広がっていた。
 薄暗がりの部屋で、俺と彼女の影が月明かりに照らされ床に映る。

 まるで天使とその天使を地獄に引き摺り込まんとする悪魔との戦いのようだ。
 そして、天使はその悪魔に決して勝てはしない。

 何度も何度も互いの腰がぶつかり合う。

 このまま二人で行けるとこまで行こうか、

「あっ……あっ……っ……ぐ……り……ふぃんっ……」
「……え……?」


 ……え……?


 俺は彼女の言葉に狐につままれたように動きを止めてしまった。
 そして俺は彼女の顔を見る。


 今のは一体どういう言葉なんだ?


 俺は目で語る。

「……フェイン?」

 無意識の内に出た言葉だったのか、彼女は不思議そうな顔をした。


 ぐ、り、ふぃん……。


 グリフィン?


 グリフィンて誰だ?


「あっ!? フェインっ!?」

 俺は自らを彼女から引き抜いて彼女を仰向けのまま乱暴にベッドに打ちつけた。
 彼女の広げた翼が所々拉げる。

「痛っ……」

 彼女は拉げた翼の様子を見る。
 何箇所か羽根が折れて血が出ていた。

「……フェイン……どうし……」

 俺は膝をついて彼女を跨いだまま見下ろした。

 彼女は恐らく初めてじゃないのだ。
 彼女は嘘を吐いていた。
 彼女は何も言わないでと俺に言ったのに、
 彼女は言ってはいけないことを言ってしまった。


 気を遣うことなんてなかったじゃないか。


 ――俺は黙ったまま冷ややかな視線を彼女に注ぎ、見下す。

「……フ、フェイン……?」

 彼女は俺の表情を不安気に見上げ、俺に向かって手を伸ばす。


 …………。


 俺は何も言わなかった。彼女の手を取りもしなかった。

「フェイン……あっ!!」

 そして、俺は彼女の手を払いのけ、彼女の両足首を強く掴む。

「痛っ!」

 強く掴み過ぎたのかウィニエルは俺が掴んだ足首の方へ手を伸ばした。
 だが俺はそれすら許さず、彼女の両脚をそのまま俺の肩へと乗せさせる。
 彼女の身体がVの字に曲がる。

「フ、フェインっ!?」

 彼女は驚いていたが、俺はそのまま彼女の最奥へと未だ冷めやらぬ自らを宛がい一気に捩じ込んだ。


				

「いっ!!?」

 彼女の顔が苦痛に歪み、身体が跳ね上がって俺の腕を掴もうとする。

「……君が悪い……」

 俺は彼女の両腕を引っ張り上げて、俺の首に縋るように腕を置かせた。
 そして俺は彼女の背を抱く。

「いっ……痛い……よぅっ……!! フェインっ!!」

 先程よりも早い動きに彼女の奥は悲鳴を上げていた。
 俺の動きに快楽を感じる暇さえ与えてもらえない彼女の花弁は、先程溢れた愛液と鮮血が混ざって滑りが悪くなっていた。

「……ウィニエル……」
「っ……フェインっ!痛いっ!!」

 彼女が俺の首を引っ掻く。
 俺はそんな彼女の抵抗などお構いなしに更に動きを速める。
 彼女が逃れようとしても俺は彼女の背を抱き、逃がさないようにした。


「ウィニエル……翼が邪魔だ」


 翼が邪魔だ。


 俺は彼女の翼の一部を折り曲げてしまった。
 彼女に激痛が走る。

「いっ……痛っ! ……ンンーっ!!」

 膣の痛みと翼の痛みに彼女は俺の首に縋るようにしがみついて声を最小限出さないようにして堪えた。
 俺の鎖骨に彼女の熱い息がかかる。


 翼を折られた天使はもう天界に帰れないだろう?


 とことんまで堕としてやるよ、君が望む所まで。


 この時の俺を支配していたのはなんだったんだろうか。

 俺はセレニスのことを口に出さなかった。
 何も言わないでと言った彼女がそれを望んでいるとわかっていたからだ。
 それが暗黙のルールだと思っていた。

 だが、彼女にも居たんだな……。


 おそらく、グリフィンとか言う奴がそうなんだろう。


 セレニスを愛している俺がずるいことはわかっている。
 彼女に想い人が居たことも何ら不思議じゃない。


 ただ、許せないんだ。


 ルールはルールだ、ウィニエル。
 俺は間違っていない。
 こうなったら、君を無茶苦茶にしてやる。
 無茶苦茶にして、天界になんて帰さない。

「ううっ……痛いっ!! 痛いよっフェインっ!!」

 俺は尚も彼女を攻め続けていた。
 狭い彼女の中への出入りは俺も多少窮屈ではあったが彼女に快楽なんて与えない、絶対に。
 俺が彼女を征服してやる。

「痛い? ……それは嘘だな」

 俺は彼女の乳房の突起を両手で強く摘み引っ張り、勢い良く放してやる。

「痛っ!!」

 そして、俺はそれを繰り返しながら彼女の首筋付近に強く吸い付いて自らの痕を付けていく。

 幾箇所も幾箇所も。

 恐らく赤く残るだろう。

 これでは例え事件が起きても他の勇者に会うことなんて出来まい。
 俺だけを頼ってくるはずだ。


 ほんの少し前まで彼女が困るようなことはしたくないと思っていたのに、こうも変わるものかと自分でも驚く。


「っ……フェイン……どうしてっ……?」

 彼女が涙を流しながら哀しみの表情を浮かべて俺に問う。
 だが俺はそんな問いに答えるつもりはさらさらなかった。
 俺の欲望は彼女を求め続ける。
 彼女は乱暴にしていても次第にそれを受け入れるようになっていった。

「……っ……はぁっ……」

 彼女から溢れ出る液体が俺を高みへと昇らせていく。
 互いが擦れ合う音が深夜の静寂をぶち壊す。
 クチュクチュと音を声に出して言ってしまえばなんとも粗雑だが、それが返って俺の欲情を掻き立てる。

「……くっ……ウィニ……エルっ……」


 あっ、あっ、んんっ……。


 粘着質の音と、彼女の熱い息が酷く艶めいて淫猥だ。
 それが俺を高みへと更に導いていく。
 彼女の苦痛の表情も多少ではあるが別の表情へと変わっていった。

「……っ……くっ……!!!」

 俺は身震いをし、全てが達したことに気付く。
 身体中に電気が走った。
 欲望が頂点まで溢れてそれが彼女の中へ注がれていく。

「あっ……!?」

 彼女は何が起こったのかわからず、震える俺を躊躇いがちに抱きしめる。

 自分の下腹部に違和感はある。
 だがそれが何かは、わかっていないようだ。

 自分の中に熱い液体が撒かれたことに気付くのはまだ先だった。

「……フェイン……?」

 あんなに酷いことをしたというのに彼女は未だ小刻みに震える俺を優しく抱きしめていてくれる。

「……はぁ……」

 俺は大きく息を吐いて、彼女の身体を静かに抱き返した。

「……フェイン……」

 俺が彼女を抱き返すと彼女は俺の首筋に優しくキスをする。

「……ウィニエル……」

 彼女がキスした場所が熱い。
 そこから熱が全身に伝わる。

 全てを思い出させる。
 理性が戻ってくる。

 ――俺は黙って彼女の中から俺自身をゆっくりと引き抜く。

 彼女の中から白い粘り気のある液体を伴って俺が出てきた。
 彼女の太股にそれが掛かってしまう。

 ウィニエルは黙って手の届く場所に丁度良くあったティッシュを取って、俺に渡した。
 俺はそのティッシュで俺自身に纏わりついた液体を丁寧に拭き取る。
 そして、ウィニエルの太股についてしまったそれを拭いてやろうとする。

「……自分で拭きますから」

 彼女はそう言ったが俺は酷いことをした反省からか、黙って彼女に着いた汚れを拭き取った。

 冷静になって考えるととんでもないことをしたと思う。
 段々と自分がしたことへの罪悪感に苛まれていく。
 セレニスへ、ウィニエルへの罪悪感。

「……フェイン……ありがとう……」

 この状況下において、彼女は俺に礼を述べた。

 ありがとう?
 あんなことをしたのに、ありがとうだと?

 君は本当にバカな女だ。

 彼女は多少ずれているのかもしれない。
 天使だから人間とは物事の捉え方が違うのだろうか?

「……ねぇ、フェイン」
「ん?」

「……眠たくなってしまいました……、眠って構いませんか?」

 いつもの口調だった。
 柔和な顔で、一体何を考えているのかわからない、その顔。

「……ああ」

 俺が応えると彼女は俺に背を向け、翼を消し、目を閉じた。
 俺も疲れて、彼女の横に身体を倒した。
 そして上掛けを掛け、彼女に背を向けて目を瞑る。

「……後悔なんかしないでね……お願い」

 布団で声がくぐもって聞き取りにくかったが、彼女は肩を小さく震わして泣いていた。

 俺は黙って、もう寝た振りをした。


 後悔なんてしてない。


 ただ、


 君と寝たことはきっと罪だ。


 天使を手に掛けることはきっと大罪だ。
 いつか、罰が当たる。
 俺はそれを受け止めようと思う。

 願わくば、俺一人が。


 君がそれを受けないで済みます様に。

to be continued…

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後書き

 多分初めての18禁小説です。色んなもの書いてみたくてチャレンジしてみました(笑)むぉーん(?)な感じになってもらえたら幸いです(笑)。
 しかし問題はあのヘボ挿絵……途中から手抜きですみません。Hのカラーも初めて描きました、ムズイ。あ、でも無謀にも昔FF7で18禁本出したことあったわ……(遠い目)。
 もっと勉強が必要かと思いますがもう絵は無理っぽいです、ぐはぁ。

 「ウィニエル…翼が邪魔だ」は自分的に名ゼリフかなぁ~と思ってます(笑)翼描くの面倒なんですよ。
 それから、ウィニエルが処女だったかどうかは後々わかるかと。
 うちのフェインは紳士だけど実は鬼畜で我儘な男っていう……ね。

 ※挿絵はクリックすると拡大します。

 グリフィンの名前出てきましたねー。実はこれ重要なんです(笑)ウィニエルちゃん、前はインフォスに派遣されてましたから。
 次回はウィニエルちゃんサイドです。

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