贖いの翼・番外編1:泡雪③ ウィニエルside ★

「え……?」

 私は彼の言った言葉の意味がすぐにはわからなくて、少し考える。


 さっきの……?


 私は考えを巡らせる。思い出すのにそうは掛からない。
 ほんの数秒だったと思う。

「……あ…………っっ!!」

 私は再び首を横に振る。

 さっきのということは……、

 このぬるぬる感は、


 私のではないのだ。


 ……いや、多少はそうであるかもしれないけれど、これは、彼の。

 彼の精液。

 私の中にまだ残ってる。
 熱くて、白い泡雪。

 彼から注がれる度、お腹の中が熱くなる。

「……っ……」

 私の瞳から一粒涙が零れた。

 自分から分泌されるそれ以上に羞恥に晒されている。
 脳天から湯気が出る程淫猥なもの。

 フェインは恥ずかしげもなく言ってのけてしまう。

 男と女の違い?
 それとも人間と天使の違い?

 ううん、それがフェインと私の違いなのね。

「……ほら……ここに指を添えて……」
「あっ……っ!?」

 フェインは私の指を赤く熟れた尖りに促し、自分は蜜と白い液体が溢れる奥の方へと指を滑らせていく。

「ひゃっ……」

 私は自分で触れた尖りの感触に目を瞑ってしまう。でも、私の様子など気にもしないようにフェインは。

「……俺が全部出してやろう」
「あっ……!!?」

 フェインの指が私の奥深く中へと入って来る。始めは一本、徐々に二本。ゆっくりと掻き回すように奥へ。
 微かに“くぷっ”“くちゅ”“くちゃ”っという音が私の下半身から聞えた。おそらく彼の残骸が溢れ出てきているのだ。

 この身体にそんな音が出る場所があるなんて思いもしなかった。

「あっ……フェインっ……!!」

 私は彼の指の動きに声を漏らす。

「……ふぅ……ウィニエル……ほら、ちゃんと弄ってやらないと気持ちよくならないぞ」

 彼は少し息を切らして私の耳朶を薄い唇で咥え、空いてる左手で私を急かすように左乳房の蕾を摘んで軽く引っ張った。

「あんっ……」

 私は突然与えられた刺激に声を上げる。

 そして私は彼に言われるままに恐る恐る指を動かし、自分の尖りを弄る。

 時々、彼はもしかして悪魔なんじゃないのかと思ってしまう。
 でも、その誘いは甘美で私は断ることが出来ない。

「小さく円を描くように……優しくな」

 彼はたどたどしい私の指に指導を入れ、私はその教えに従う。

「あっ」

 彼の言う通りに指を動かすと、ある場所にだけ電気が走る。彼の精液と私の愛液が混ざり合って滑りは最高に良かったから、私は次第にその指の速度を速めた。

「んぁっ……」

 声が勝手に漏れる。

「……そう……ウィニエル、いい子だ……静かにな……」

 彼はそう告げると私の耳に軽くキスをして、左乳房の蕾から手を放し、今度は私の口をその手で塞いだ。

「んむ……? ……んん……っ……」

 私は彼の行動に疑問を抱きながらも、理性をすっかり解かれてしまい、然程気にすることもなく夢中で自らを弄んでいた。

「……君の声は大きいからな……声が聞えたらまずいだろう?」

 彼の声が酷く冷静なのに対し、指は激しく私の奥を掻き回している。さっきよりも指が一本増えている。肉壁と擦れる粘着質な音が僅かに私の耳に届いてその音が私を酷く興奮させた。

「んっ……んっ……んっ……」

 私は二箇所から与えられる感覚に喘いでいた。私の口を塞いでいる彼の手に唾液が付着する。

「……ウィニエル……」

 フェインは私の唾液に気が付くと、器用に口を塞いだまま人差し指と中指を口の中へと挿入する。

「ふぁむ……んんっ……ふぇい……んんん……」

 私は誤って彼の指を噛まないように上手に舌を転がした。

「……君は可愛いな……」

 フェインははにかんで静かに告げたけれど、

 ふー、ふー、と息は荒かった。

「ンッ、ンッっんふぅ……!!!」

 私のローブを掴む左手にも力が入る。
 絶対この手は放してはいけない。今放したら月明かりに全てを曝け出してしまう。

 いつの間にか肩幅強開いている足。
 ショーツの中に二本の右手の歪な膨らみ、太股を伝う透明な液体と白い液体。
 それは一部床にまで届いてる。
 そして、ローブの外に身体が晒されたならきっと不自然な湯気が立つ。

 誰かに見られたら。
 こんな姿を天界の誰かに見られたら?


 ……でも、今はそんなことどうだっていい。


 さっきから感じてる微量の電気が二点に集中してきている。
 ううん、それが二点なのかもうわからない。
 下腹部の感覚が痺れてきて、それを支える両膝が小さく笑い始める。

「……ああ……イッていいよ、ウィニエル」

 フェインは再び私の口を塞ぐ。
 そうでなければ声が漏れてしまう。
 彼は私の身体のことを私よりもよく知っているみたい。

 彼の指の動きも激しさを増し、私の指もそれ以上に激しく動いていた。自分の意思とは無関係に本能がそうさせている、そう感じていた。

「ンッ……ンッ……んぅ……んんんンンンッッ!!!!」

 私は初めての感覚に身体を一瞬大きく仰け反らせて痙攣させる。彼の舌と指でこうされたことは何度かあるけれど、自分の指で達したのは初めてだった。
 私は声を堪えようとしたけれど、思いのほか声は大きくて、フェインはより強く口を塞いでくれた。


「……ウィニエル……イッたな……?」

 私の声が多少治まってからフェインは口から手を放し、問い掛けて来た。

「はぁっ……はぁっ……は、はい……」

 私は酸素が欲しくて肩で息をして答える。

「……そうか……」

 フェインは私の返事に目元を緩めて微笑んでいた。

「え……あっ……やっ……やめっ……ふぇいんっ……!」

 彼の右手はその間も全く私のショーツから出る気配はなくそこに居座り続け、敏感になった私の性感帯を尚も刺激し続ける。
 彼の指が動く度に身体が勝手に震え、すっかり固くなった乳の蕾がスリップと擦れ合って少し痛い。

「……ローブはちゃんと押さえておくんだ……それと……静かにな?」

 フェインは今度は口を塞いでくれずに、左手で固く勃起した蕾を摘んで核を刺激するよう巧みに指を転がしていた。
 先程までとは違い、楽しそうに笑っている気がした。

「やっ……あっ……今、イッたばかりなのに……こんなっ……」

 彼から与えられる刺激に私の腰が徐々に砕けていく。
 それに耐える為に右手が冷たい手すりを掴んだ。

 掴んだ手すりは少し、滑る。

「後で手すりを拭いておかないとな……」

 彼から刺激を与えられ続けながら、フェインの言葉に私は自分が掴んだ手すりの手元を何とはなしに見た。

「……っ……いやぁっ……」

 わかってはいたけど、実際に目にすると涙が込み上げてくる。

 私の手は彼の精液と私の愛液まみれで寒空の下、白い湯気を上げていた。
 それを目の当たりにすれば一気に正気に戻されてしまう。


 そして、羞恥心。


 でも、彼は私のその顔を見るのが楽しいみたい。

 私は恥ずかしさで目を固く瞑るしか出来ないというのに。
 涙を零すしか出来ないというのに。


 いじわる。


「……フッ……ウィニエル。もう一回イカせてあげよう……」

 彼は鼻で笑って、未だ残る私の小さな痙攣も無視して今度はショーツの中の尖りを弄る。円を描くように、時に指に挟んで引っ張って、時に乱暴に上下に擦る。

「あっ……やっ……フェインっ……もう……許しっ……!!」

 私はなるべく小さな声で彼に懇願する。

 もう、指じゃなくて、あなたのがいい。

「……もう……いいのか?」

 こんな時でもフェインの声は酷く冷静で私は苦しくなる。

「やっ……違っ……」

 私は首を横に何度も振るう。

「何だ……なら素直に感じていればいい……」
「そう……じゃなく……って……っっ!!」

 彼の意地の悪い言葉に私の身体はいちいち反応していた。

 本当は彼だってわかってるはずなのに。


 フェインが欲しいの。


 あなたの熱い情熱が欲しいの。


「ウィニエル……何が欲しいのか言ってごらん」

to be continued…

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