『ウィニエル……何が欲しいのか言ってごらん』 彼のこの言葉は私の背筋をぞくぞくと震わせる。 「い……やっ……!!」 私の返事はノーだった。 でも、身体は違う。 悔しいけれど、彼に貫いて欲しい。 私の奥まで突いて。 あなたの気が済むまで私の中をあなたで満たして。 でも言えないの、私は天使だから、淫乱は大罪だから。 「……全く君は強情だな……。まぁ、さっきもしたことだし……俺はしなくても構わないが」 彼の台詞は至極冷静に聞えるが、呼吸は所々乱れていた。 フェインだって、したいんだ。 でも、私から言って欲しいのね? 言えたら、 素直に言えたらいいのに。 「……ごめ……なさ……私……言えな……んっ……天使だ……か……あっ……」 私の頬を熱い雫が伝ってゆく。 「……ああ……すまない。君はそういうことは言えないんだったな……」 そうは言うけれど、彼は決して私を放してはくれない。精神を乱す感覚を尚も与え続ける。 「……あっ……や……いっ……」 私に再びピリッとした電流が流れ始める。 「……ウィニエル……イク時は自分の手で口を塞いでくれ」 「え……あっ……はっ……っ……どうやって……」 「こうだ。ほら」 フェインは手すりを持つ私の手を自分の口元に乱暴に宛てさせた。 「んっ……んむっ……!?」 二人の卑猥な液体が付いた手が今、自分の口を塞いでいる。僅かに開いた口の隙間からその液体の味がする。 苦い……。 「……ちゃんと、塞いでおくんだぞ?」 フェインはそう告げると、今までずっと居座っていたショーツから手を抜いた。 「え……?」 私は突然の彼の行動に瞬きを大きく二回する。 もう少しだったのに。 もう少しでまたイクことが出来たのに。 こんなお預けは酷いよ、フェイン。 散々彼の指で弄られた私の秘部は感覚が殆ど麻痺していた。 その先にあとちょっとでも触れたら私は再び大きく身体を仰け反らせるだろう。 「……俺も、もう我慢出来ない……」 彼の低い声が掠れて聞こえる。 「……?」 私の背後で彼が動いて、背を少し屈めた気がした。 「……ウィニエル……っ……」 その声と共に彼は私のショーツを手馴れた手付きで膝まで下げ、私のお尻を片手で押さえ、もう片方の手で固く張り詰めたモノをドロドロに濡れた奥に宛がうと、一気に根元まで捩じ込んだ。 「……あっ! ……っつううっ!!」 私は突然体内に入って来た異物感に痛みを覚え、歯を噛み締める。 「……っ……こんなに濡れてるのにっ……きつっ……!! はぁ……」 フェインの歯軋りの音も多少聞える。私の奥は彼には相当狭いのか、彼は息苦しそうに息を吐く。 「……あんっ……ふぇい……も……だめぇっ……!!」 私は彼が入って来るなり、絶頂に達してしまった。 けれど、彼がそれで許してくれるはずはなく……。 「……ウィニ……エルっ……まだだ……っ!」 彼の両手が私のお尻をがっちりと掴み、逃がさないようにして、彼はゆっくりと自らと引き抜く。 「ひぁっ……!」 彼が出ていく際に奥入口の肉壁が彼と擦れあって、全身に電気が走った。身体の隅々までが痺れて私は身震いしている。 「……くっ……」 彼は自らが抜けてしまう寸での所で止め、またゆっくりと私の奥へと入っていく。 「んはっ……やっ……ふぇいっ……!!」 手すりを持つ手に力が入らず、彼に攻め立てられて私の身体が前のめりにバルコニーの柵に倒れ込んだ。柵の隙間に強く押し付けられ、頬に冷たい鉄の感触が当たるけれども、私から零れた息は熱く白く煙り、それは止まることなく一定の間隔で吐き出されている。 「……っ……ウィニエルっ……」 彼は私の髪に顔を埋め、名を呼びながら、時折息を詰まらせるようにして、出入りを繰り返した。私の奥と彼のモノが擦れ合う音が静かな闇に木霊する。 粘着質の酷い淫靡な音色。 その音が私の神経をも麻痺させていく。 でも、もう。 「やぁっ……ふぇい……んっ……お願……いっ……もうっ……!! はぁっ……はぁっ……」 私は息を切らしながら彼に告げる。 限界だった。 さっきも貫かれて、今も、もう二度もイカされて、その余韻を味わうことなく刺激を与えられ続けている。そして、私の身体もまた、それに敏感に反応し、更に高みを得ようと私の意思とは無関係に彼を喜んで受け入れている。 身体は彼と繋がっていることを喜んでいる。 でも、こんなのは。 「んはっ……あっ……はぁっ……はぁっ……」 私はただ喘ぐだけだった。私の中で彼が出入りする度、少しずつ大きくなっている気がする。 「……っ……ウィニ……エルっ……今日はっ……君のため……にっ……」 声が切れ切れになりながらフェインは告げると、私のお尻を押さえていた両手の内、片方の手だけ放した。 「え……? あっ!? や、やだっ! やめっ!!?」 私は彼の行動に目を見開く。 フェインの放した片手は私の赤い核を弄くり始めたのだった。もうそこはこれ以上にない程濡れていて滑りがよく、先程達したばかりの私には軽く触れられるだけでも感じてしまう。 なのに、彼はこれでもかと言わんばかりにそこにまだ刺激を与えてくる。さっきよりも優しくはない。 強く激しく、指に精液と愛液を纏い、擦りつけながら大きな音をわざと立てるようにして。 その刺激に加え、ぬるぬるの奥には彼自身がピストンのように行為を繰り返す。私のお尻に残った片手が私の身体を彼から逃れられないようしっかり押さえ込んでいた。 「んふぅっ……!! はぁっ、はぁっ……ふぇ……ふぇいんんんっ……!!」 彼のその行いに私はまた達してしまう。一瞬大きく跳ねた後、小刻みに身体が震える。 「っ……ウィニエル……イキ過ぎだぞ……? ……っ……」 フェインは喉を詰まらせながら口角を上げた。 「だ、だっ……て……こんっ……なっ……んはぅっ!! いっ……」 私のローブを持っていた左手が離れそうになる。 「……イイのか?」 ちゅくちゅくと、淫らな音と共に彼の指が尚も私に刺激を与え続ける。 「いっ……いやぁっ……弄ら……ない……でぇっ!!」 涙が勝手に頬を伝っていく。 もう羞恥心や、平常心、 そんなことがどうでも良くなっていく。 頭の中が真っ白だ。 「……っ……可愛い……ウィニエル……っ……」 フェインは私の頭に唇を落した。 彼の声は熱く、息が先程よりも荒くなっている。 恐らく彼は我慢しているのだと思う。 私を辱めて羞恥に晒し、堕落させようとしているんだ。 堕天使にしたいの? それとも、地上に留めておきたいから? それとも、ただの捌け口? ……ううん。 今は何も考えられない。 真っ白なの。 今ならあなたの望む言葉が言えるわ……。 「っ……ふぇいンン……っ……いいよぅ……気持ちいい……はぁっ……」 私は彼の望む言葉を告げてあげた。 だって、彼は私のその言葉を聞きたかったのだから。 それを言わせるまで何度でも私をイカせて、私を壊すつもりだったんだ。 「……ウィニエルっ……フッ……そっ……う・か……」 フェインは満足したようにほくそ笑みながら指と自らを尚も動かし続ける。 「あっ……イって……イって……いいよっ……もうっ……んあぅっ……!!」 私の奥底の彼と、直ぐ隣の尖りを弄る彼の指が時折触れ合って、私達二人の快感を増幅させる。 「っ……」 それでも、彼はまだ我慢していた。 まだ、言葉が足らなかったのだろうか? でも、刺激は段々激しくなっていくばかりで。 「ふぇいんんっ……中……で……いいっ……からっ……!!」 私の理性などとうに飛んでいて、私は腰をもどかしく動かし始めた。 「くっ……あ、ああっ……」 フェインの喘ぐ声が聞える。私に返事をしたんだと思うけど、その声。 彼の声、色っぽいな……なんて、私は思っていた。 「っ……ウィニ……エルっ……あんま……締め付けっ……るなっ……」 私の首筋にフェインの熱い息が掛かる。 「んっ……な、何もしてなっ……あぅっ……ふぇいんっ……! もう……壊れちゃうっ……!」 私が腰を動かし始めてから、彼が出入りする速度も速まり、フェインの腰と私の腰がぶつかり合う。そして、動きは直ぐに激しくなり、それまで何とか大きな彼を受け止めていた奥が悲鳴を上げた。 達し過ぎて感覚がおかしい。身体全身が性感帯のようで、彼の息が掛かる首筋や頭からも、彼の手が触れているお尻からも、熟した尖りからも、自分の髪が僅かに触れている肌からも震えが全身を駆け巡る。 「ひあっ……もうっ……だめっ……頭おかしくなっちゃうっ……!!」 「……っ……ウィニエルっ……俺も……もう……っ! くっ……っつ!!!」 フェインが息を一瞬飲み込むと同時に、彼自身も刹那収縮し大きく波打つと、私の中に彼から放出された液体が流れてくる。 「はぁぅぅぅぅっ!!!」 フェインの熱い情熱に私は全身を大きく震わしながら、彼の白濁したそれを受け止めた。 「……っ……ウィニ……っ……くっ!!」 彼の身体も震えていた。 先程よりも恍惚な顔ではあるが、眉を顰めている。 「んっ……あっ……」 私の奥は彼から吐き出された精液を全て搾り出すように彼を締め付けていた。 「……っ……ウィニエルっ……君の締め付けは……すごいな……っ……」 彼は辛そうにしているが、いつの間にか両手で私のお尻を強く掴んでいて、私から自らを抜こうとはしなかった。 全てを注ぎたい、そう思ってくれた? 私はそうであったらいいと思ってた。 ――あなたで、私を満たして。 「はぁ……はぁ…………ふぅ……ふぅ…………」 しばらくして私と彼の息遣いが平常に戻っていく。 「……はぁ……」 フェインは一息ついたように白い息を吐いた。 まだ、私達は繋がったままだった。 「……ンぁっ……」 彼は私に全て注ぎ終えると私の中からゆっくりと自らを引き抜いていく。同時に私のお尻を支えていた手も離れる。 「……あっ……」 「ウィニエル!?」 彼の手が離れると、私は身体の力が途端抜けて、その場にへたり込んでしまった。冷たいバルコニーの床にお尻が着く手前で、彼は私の腕を引き上げる。 「大丈夫か?」 「……は、はい……大丈夫です……」 私は彼を見上げた。 こんな時にフェインは何て顔をするんだろう。 眉尻を下げ、私を心底心配するその顔。 さっきまでの悪戯な笑顔は一体どこにいったの? 私をこんな風にしたのはあなたなのに、どうしてそんな顔するの? あなたは不思議な魅力を持った人ね。 「……くっしゅんっ……やっぱ寒いな。……部屋戻ろうか」 彼は可愛くくしゃみをしながらローブで私を包む様に抱き寄せる。背に回された彼の腕が温かい。 「…………」 私はまた彼を見上げた。 彼の腕は逞しくて安心できて、でも顔はまるで子供のように苦笑いを浮かべている。 やっぱりこんな場所でするのはまずかった? 「……ふふっ、そうですね。でも……こうしてフェインと居るととても温かい……」 私は彼の笑みに応えるように目を細め、微笑んだ。
to be continued…