贖いの翼・番外編7:空腹③ フェインside ★

「あ……香り……? そういえば……」

 ウィニエルが何か思い出したように俺から離れようと腕を離すが、

「……ウィニエル、寒い。もっと傍に……」
「へ? は、はい……」

 離れた腕を強く引いて、彼女を俺の膝の上に跨ぐように座らせた。

「あ、あの……フェイン?」

 耳元で彼女が俺の名を呼ぶ。

「……何だ?」

 俺は応えながら右腕を彼女の背から離し、歯で手袋の指先を挟み、引っ張るようにしてそれを外した。

「あの……私、思い出したことが……っっ!?」

 刹那、
 彼女の腕の力が俺の肩に込められ、細い指が上着のフードを纏い、後ろに引かれるように強く掴まれる。

「ふぇ、フェインっ!? な、何して……」

 あっ。

 と彼女が声を漏らす。

 俺は俺に縋る彼女の秘部を下着の上から擦りあげていた。
 俺の左腕は彼女が逃げられないようにがっちりと彼女の背を押さえている。

「……はむいはらな」

 寒いからな。
 本当はそう言いたかったが、口に銜えた手袋の所為で上手く言えなかった。
 俺は邪魔な手袋を床に落とす。

「フェイン……んっ……」

 彼女は一瞬逃げ出す為に離れようとしたが、俺の腕の力に勝てずに、その場に留まった。替わりに俺の肩に必死に縋りつく。フードが後ろ側に強く引かれているが、首が絞まるほどではなかった。

「ど、して……こ……あ、はっ……」

 彼女の声が先程より大きくなった頃、俺は下着の側面から彼女の奥へと指を滑らせていた。人差し指と中指で蜜壷の上にある突起を優しく愛撫する。時折それを指の間に挟み、軽く引っ張ってから、蜜壷まで指を這わせ、先ずは一本指を埋めてそれを蜜壷から抜けないように前後に動かす。
 指を埋めた蜜壷は温かく、直ぐ俺に手の感覚を取り戻させた。

「はっ……んん」

 指が出入りを繰り返す度に彼女は小さく喘ぎ声を上げた。すると、少量の蜜が蜜壷から溢れてくる。多少滑りが良くなった所で指をもう一本足して内壁を擦り上げるように往復運動を繰り返し、奥からより多くの蜜を掻き出す。
 時間にしたらそう経ってはいないが、ウィニエルは感じやすいのか、蜜壷から零れた蜜は充分な量で、既に俺の指先だけでなく、手の平までも濡らしていた。恐らくショーツも濡れているだろう。

 指や手に纏わり付く彼女の愛液が温かくて気持ちいい。
 指と秘部とが擦れ合う粘着音が小さく聞こえている。


 どうして、こんな所で?


 ウィニエルの疑問は理解したが、答えはわからない。

 あえて言うなら、急にしたくなったから。

「んんっ……フェインっ……」

 彼女の身体が先程より温かい。ウィニエルの顔が上気しているのかを確かめるため、俺は少し左腕の力を弱めた。身体が僅かに離れた隙に、彼女の顔を見る。
 床に置かれたカンテラの灯りが床から彼女の顔を映し出し、薄暗がりだが耳まで赤く染めていることがわかった。

 そして、彼女は再び俺に抱きついて来る。

 俺に縋りつく様が可愛い。

「これ…で…寒く……いですか? あっ……」

 寒がる俺を気遣ってか、健気にたどたどしく告げるが、その声を俺の耳元で告げたのは彼女のミスだった。
 その間も俺は彼女の秘部を弄くり続け、彼女は一時だけ縋る腕により力を込め、小さく「んんっ」と声を殺すように漏らすと、身体を小さく痙攣させる。

 もう達してしまったらしい。

「はぁ……はぁ……」

 俺の耳元に彼女の熱い吐息が掛かる。

 その息が俺に訴えている。


 欲しい。


 俺にはそう聞こえていた。


「ウィニエル、腰を上げるんだ」

「……はぁ……は…ぁ……」

 俺は呼吸の整わない彼女の腰を浮かせる。

「な、何……?」

 俺が背後にあった壁に背を凭れ少し身体をずらして、彼女が膝を床に着け腰を上げると、太腿を透明な雫が伝っているのが見えた。
 これだけ濡れていれば痛みもないだろう。

 俺はズボンのファスナーを下ろし、窮屈になった下着から膨れ上がった自らを外気に晒す。
 それは天井を向いてそそり立ち、ウィニエルに見下ろされている。

「……本当に、するんですか?」

 意外にもウィニエルは冷静に告げる。
 ここまでしておいて今更後には引けないはずなのだが、余裕でもあるのだろうか。

「嫌か?」

 俺も何故か冷静に訊き返していた。

 訊ねた彼女の表情が暗がりでも俺を欲しているのがわかる。
 物欲しそうな瞳を潤ませながら、俺の目を見てから俺自身を見ると小さく唾を飲み込む。

「……嫌じゃあ……ありませんけど……」

 ウィニエルは俯き口籠もり、両手の指の腹を重ね合わせた。
 俺が彼女を拒否出来ないように、彼女も俺を拒否出来ないことはわかっている。


「なら、おいで」
「で、でも……ここは……」


 俺が手を差し出し、彼女に腰を下ろすように告げると、彼女は躊躇う様に辺りを見回した。

 堕天使の気配を微かに察しているのかもしれない。
 何となくだが、俺にもこの空間に俺達以外の気配を感じている。

 だが、奴は先程から俺達に近づこうとはしない。

 恐らく現時点ではウィニエルに手を出せないのだろう。彼女が纏う光の守護が堕天使を近づけさせないようだ。
 その光の守護が何なのかはわからないが、それは彼女本人の力というより、別の力が加わっている気がする。
 天界から与えられているものなのかもしれない。

 それに、俺が傍に居ることで彼女自身の精神力が増幅されている気がする。
 そして、俺も彼女が居ることで奴の意思が入り込む隙を与えていない。
 俺の意識が無い間無意識だったのだろうが、ウィニエルが傍について居てくれたことは正解だった。

 彼女が居なければ俺は悪夢に魘されていたかもしれない。俺の想像もつかない悪夢を堕天使は此見よがしに見せていただろう。
 物理的な危害を加えられていたとも考えられなくはないが、まだ完全に復活していない堕天使が直接的に攻撃を仕掛けてくる可能性は低い。

 余計な精神的ダメージを受けずに済んだのだから、彼女に感謝しなければならない。


「おいで」


 俺は躊躇う彼女の手を取って、腰を下ろすように促す。

「でも、フェイン……」

 尚も、彼女は辺りを見回す。

「……見られているのが気になるか?」

 俺が訊ねると口元に手を添え、静かに頷く。
 だが、躊躇うのと反して少しだけ腰が俺の方へと降りている。

 途中でやめるつもりはなさそうだ。
 もちろん、俺もやめるつもりはない。


「ウィニエル」


 俺が彼女の名を呼ぶと、彼女は黙ったままスカートの中に手を差し入れ、ショーツを下ろそうとする。

「そのままでいい」
「……え?」

 俺は彼女の手首を取って制止し、その手を俺の首へと回させる。

「……フェイン?」
「そのまま、下りておいで」

「はい……」

 俺の言葉のままにウィニエルがゆっくりと腰を下ろしてゆく。俺は彼女のショーツ、秘所を覆う部分を指で避け、そこへ未だ冷め遣らぬ欲望を宛がい吸い込ませていくが、座ったままのこの状態ではよく見えず、先ずは互いの先が触れ合った。

「あっ……」

 ウィニエルは前の余韻が多少残っているのか声を漏らす。その甘い声に誘われるようにして、俺自身も本来向かう場所へと探り探り、彼女の各秘所にその存在を知らしめるように擦り付けながら進んでいく。

「んんっ……!」

 彼女の熱い吐息が俺の耳に掛かると同時、俺自身がようやく蜜壷の入口へと辿り着いた。入口は先程の行為で程よく濡れており、一気に奥まで入れそうだ。
 そう思い俺は彼女のショーツから手を離して太腿を押さえ、彼女を下まで下ろそうとする。
 だが、先がほんの少し入っただけで、それは止まってしまった。

「いっ……た……」

 彼女は腰を全て下ろしておらず、痛みを伴っているのか俺に必死にしがみついている。

「……大丈夫か?」

 まだ、早かったのかもしれない。

 だが、俺を包む彼女の蜜壷は十二分に濡れている。先だけしか入っていないこの状態でも、俺の方はかなり気持ちが良い。
 こうして彼女と性行為をするのは初めてではないし、前戯もそれなりにしたはずなのに、なぜ彼女は痛がっているのだろう。

「だ、大丈夫……です……っうう……」

 呻き声にも似た声が聞こえ、ウィニエルが健気にもゆっくりと俺を飲み込んでいく。
 辛そうに腰を下ろす彼女が可哀想に思えて、俺は太腿を下から支えてやった。

 と、

「……っ……」

 彼女が腰をゆっくり下ろしていくその間、俺にも圧迫感が伝わってくる。
 彼女の中がいつもよりきつく感じる。

「っ……フェイン……大丈……夫?」

 ウィニエルが俺を気遣うように声を掛けてくれるが、

「あ、ああ……っ……」

 実際はかなり辛かった。
 このままだと、奥まで入れただけでいきそうだ。

「よかっ……」
「すまない、ウィニエル」

 彼女の鈍鈍した動きに耐えられず、俺は太腿を支えていた手を離した。

「あっ! ひっ……!!」

 重力に倣って、熱い欲情の塊が一気に彼女を貫く。


「んんんんんっ!!」


 重力に逆らう翼が使えない為に、痛みの回避方法はなく、ウィニエルは歯を食いしばるようにして縋りつく腕に力を込めた。

 そして根元まで彼女に埋まると、奥まで到達した俺はある種、達成感を手に入れ、彼女は彼女で、痛みの頂点を脱した安堵感を手に入れる。

「……はぁ……はぁ……」

 と、俺が呼吸すると、

「はぁ……はぁ……」

 と彼女も返すように呼吸した。

 一先ずそこまで達成した俺達は、繋がったまま一時休戦のように動きを止める。


「……フェインの意地悪……」


 俺に回された腕が抗議するように、首の方へと力を込め圧迫する。

「すまない。あまりにも辛かったんでな」

 俺は彼女の腕を取り、両手首を捕まえ胸元付近で支えてやると、互いに向き合うようにウィニエルの身体を少しだけ反らせた。

「……それなら……別にいいんですけど……」

 彼女は俺と向かい合うと、恥らうように口を濁しながら床の方へと視線をずらす。

「君は可愛いな」
「……もう、何言ってるんですか……」

 ウィニエルは俺の言葉に呆れたように告げてから今度は視線を合わせる。

 それを見計らうようにして、俺は腰を突き上げた。

「あっ、やっ……」

 瞬目、ウィニエルの表情が強張り眉を顰める。

「いっ……」

 まだ多少痛みが残っているのか、彼女の瞳に涙が浮かぶ。

 が、

 俺は構うことなく不恰好ながらも、腰を突き上げていった。

to be continued…

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