「……ははは……」 ウィニエルの額に冷や汗が流れる。愛想笑いを浮かべて、俺を見つめている。 嫉妬心か。 酷いもんだ。 俺がこうなってしまうと止められないことを、彼女は知っているはずなのにな。 「……ウィニエル、愛してる」 「フェイン……」 ウィニエルは俺の言葉に少し困ったような顔で、ふぅと、小さく息を吐いた。 「……一晩、お世話になります」 観念したように、そう告げて、俺の頬に軽く口付けをする。 「ああ、ゆっくりしていくといい」 俺はようやく、彼女の手首を開放して、にこやかにテーブルの上のカップを手に取り立ち上がると、片付け始めた。 “私も片付けます”と、彼女がポットを手に後ろについてくる。 「それじゃあ、私今日、晩ごはん作りますね」 「ああ、頼む。アイリーンも喜ぶ」 ウィニエルが今晩の食事を用意してくれるそうだ。 塔へ来た時には大抵俺が用意するのだが、レパートリーが少なくて、アイリーンに文句を言われていたから助かった。 台所はすぐ隣だ。台所まで着いて、流しにカップを置くと、彼女も同じようにポットを置いた。 それを見計らって、 「……っ……んぅっ……」 突然、乱暴に彼女の両肩を掴んで、薄桃色の唇を塞ぐと、中へ俺の赤い舌を差し入れ、口腔内を丁寧に舐め回す。 上の歯、下の歯の歯列をなぞる様に俺の舌を這わせてから、ウィニエルの舌を絡めるように、蠢かした。 彼女は小さく、はっはっと息をするが、抵抗せずに行為を受け入れて、しばらくすると、表情を変えた。 瞳は虚ろで、頬を真っ赤に染めて、とろんとしている。 「……はっ……ふっ……ふぇ……」 「…………」 俺はウィニエルの上気した顔を確認すると、唇を放し、今度は彼女のこめかみ、耳に近い頬、顎、首筋、耳元に順に口付けを落としていく。 何度も啄ばむように、繰り返し順に唇を落としていく。すると、首筋と耳元に触れた時に小さく「ぁっ」と声を漏らして身を捩った。 他の場所もくすぐったそうにしてはいるが、特に首筋と耳元が弱いらしい。 その反応が可愛くて、首筋と耳元を中心に今度はちゅっちゅっと音を立てながらキスをした。 「はっ、ぁっ」 「……君はこことここが弱いんだな」 「あっ……ダメ、フェイン……」 小さな抵抗のつもりか、ウィニエルが俺の胸に掌を当てる。肩が震えている。 「……本当に駄目なのか?」 俺はキスを止めて、今度は舌を出して、先程の場所を這うように舐めた。 「!? あああっん……ぅ……だ、だって、ここ台所……です、よ?」 「ああ、知ってる」 ウィニエルの瞳に涙が薄っすらと浮かぶ。 止めて欲しいと、懇願するように。 その顔も、俺に取っては興奮材料にしかならないというのに。 「うぅ……んぁ……アイリ……ーン……やフィン……が……来た……らぁっっつつっ!!」 俺がウィニエルの言葉を無視して、彼女の耳に舌を差し入れると、一際大きな声を出して目を固く瞑った。 「……来ないさ、君が大きな声を出さない限り、な」 熱い息と共に耳元に囁く。 すると、ウィニエルは俺の話をきちんと理解したのか、小さく「……はっ……はっ……」と苦しそうに息をして喘ぐ。 「……なぁ? ウィニエル?」 「え……っ!? あっ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!」 そして、俺は首筋と耳元の愛撫を繰り返しながら、ウィニエルの背後に回ると、彼女のスカートを撒くって、下着の中へと手を侵入させていく。 「待たない」 「やっ……ダメぇっ!!」 下着のゴムを通ると、中からふわっと温い空気が俺の手を招き入れる。そして、彼女の秘所へと、探るように指を這わせていく。薄い茂みを超えて、その先へ。 彼女は駄目だと言いつつも、無理に俺を剥がしたりはしなかった。 「ふぅ、ふぅ……大丈夫だ、脱がしたりはしないさ」 「やっ……それっ……全然大丈夫なんかじゃっ!! っっつつつっ!?」 ウィニエルの身体なんて、全て知っている。 俺はいとも容易く、彼女の弱い部分を探り当て、人差し指と中指で円を描くようにこねくり回した。 あくまで優しく、ねっとりと。 「はっ、あっ、ンッ……」 更に彼女の項に、唇を落として、空いた片手で服の上から豊満な胸を揉む。 下着を着けているからあまり感じないかもしれないが、突起のある場所を摘むようにして、大事に揉んでやる。 「うぅっ……はぅ……」 ウィニエルが流し台に手を付いて、身体を支える。 どうやらもう、自力で立っていられないらしい。 「……ウィニエル、愛してる」 「あっあっ」 くちくちゅと、彼女の下半身から淫らな音が聞こえてくる。 俺が、愛していると言った途端、奥から溢れてきたようだ。 ウィニエルは言葉にも弱い。 「はっ、はっ……どう、だ? 気持ちいいか?」 「はっ……っ……」 ウィニエルが俺の問い掛けに小さく頷いて、顔だけこちらに向けると、額に汗が見て取れた。 そして、微弱に身体が震え始めていた。 どうやら、絶頂に近づいているようだ。 虚ろな表情と物欲しそうな顔が、上目遣いに俺を見る。 このままじゃいけそうでいけない。いや、このままいきたくない。そんな顔をしていた。 「ふぇ、フェインのが……あっ……んはっ……」 ウィニエルが俺を求めている。 俺の息もかなり上がっている。ウィニエルの喘ぐ姿に興奮し過ぎて、下半身が窮屈で仕方ない。 俺はここで一旦下着から手を出し、台所にある作業台の上にオリーブの実を見つけ、ウィニエルに悟られないよう、それを手に取った。 「……フェイン?」 ウィニエルが訝しげに俺の名を呼ぶ。 「何でもない。ちょっと手が疲れただけだ」 ちゅっと、彼女を安心させるように耳に口付けをする。 その後で、ウィニエルにわからないようにオリーブの実に小さな声で魔法を掛ける。 本当は全然疲れていないが、手を振る振りをしてから、彼女の秘所へと戻った。 そこは蜜に溢れ、ぬるぬると、俺の指に絡み付いてくる。 「……ウィニエル」 「あっ……な、何ですか? 今の……」 俺は魔法を掛けたオリーブを彼女の中へと滑り込ませる。 「今、何か入ってきた気がします」 「……指を入れただけだ……痛くはないだろう?」 「は、はい……」 オリーブには二つ魔法を掛けておいた。 形をぼかす魔法と、もう一つは……その内わかる。 形をぼかす魔法は一瞬だけ気付くこともあるが、ないものとして形を周囲のものになじむようにぼかすもの。 それを応用した。効力は一時間~二時間て所か。 ジグが魔法を悪用するなと言ってたことがあるが、こういうのは悪用というんだろうか。 そんなことを考えつつ、自嘲気味に笑って、ウィニエルに快楽を与える。 「っ……んぁぅっ……ふぇぃんん……はぁっ、はぁっ……」 俺を請うようにウィニエルの口が開くと、粘度が高くなった唾液が糸を引いた。 その光景が、益々俺を興奮させる。 俺だって、苦しい。早く、君の中へ全て注いでしまいたい。 「ふぅっふぅ……」 鼻から興奮が漏れ出す。今すぐに入れてしまいたい。 だが。 俺はここで、全ての動きを止める。 「フフッ、いや、ウィニエル、やめとこう」 「えっ……」 ウィニエルの温かな秘所から手を抜き去り、胸を弄んでいた手も降ろす。 そして、その手で乱れたウィニエルの髪を整えるように撫でて、 「……時間も時間だしな。食事の用意、俺も手伝おう。ウィニエル、エプロンは必要か?」 俺は爽やかに微笑んで、台所の作業台に掛けてあるエプロンを取ると、彼女に着けてあげた。 「え……」 ウィニエルは目を丸くして俺を見る。 「……そんな顔をしないでくれ、ただのいたずらだ。顔を洗ってくるといい」 俺の唾液でベタベタにしてしまったからな。と付け加えて、彼女の頬に軽くキスをし、ウィニエルにタオルを渡す。 「…………はぃ」 ウィニエルは俺に指摘されて恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして俯き、洗面所へと足早に行ってしまった。 「……今は、まだしないさ」 そう、今はまだ。 フィンには決まった時間に食事させてやらないと、可哀想だしな。 「……あの……顔、洗ってきました……」 洗面所に行って数分後、顔を洗ってきたウィニエルが戻ってくる。 「ああ、綺麗になったみたいだな」 顔を洗ってきたウィニエルを迎えると、俺はウィニエルの唇に軽くキスをした。 「…………」 ウィニエルは俺が離れると、少し不機嫌そうな顔で、見つめてくる。 いかせてもらえなかったから、怒っているんだろう。 無抵抗で受け入れたのに、何でいかせてくれないの? とでもいいたげだ。 これは、俺を嫉妬させたおしおきの一つ。 俺も苦しいが、ウィニエルを簡単にはいかせてはやらない。 あといくつか、おしおきが残っている。 「……ごめん」 彼女の機嫌を直すべく、形だけ謝罪の言葉を並べる。 「……ごはん、何食べたいですか?」 ウィニエルは俺の言葉に機嫌をすぐに直して微笑むと、台所にある食材を眺めた。 こういう切り替えの早いところも、可愛くて愛しいと思う。 形だけの謝罪で騙される、バカな娘だ、君は。 「そうだな……君の得意のパスタがいいな」 「わかりました。それじゃぁ、そこの野菜取ってくれますか?」 俺も微笑み返すと、ウィニエルは手を洗って、ナイフを手に取った。 「ああ、俺が切るよ」 彼女の指示で俺は野菜を手に取り、ナイフを貰って、切ってゆく。 一緒に調理をするのは何度目かな。 時々失敗したりもするが、楽しいひとときだ。 だが今日はそれだけじゃない。 こんな風に、穏やかな空気が流れてはいるが、俺の中にはまだ色々と燻っている。 ウィニエルの身体も恐らく、同じ。 今日は沢山焦らしておしおきをしてやると決めている。 自分にも、苦行な気もするが。 今は穏やかに、ウィニエルの言う通りに従おう。 夜はたっぷりと時間があるのだから。
to be continued…
後書き
こんにちはー! お久しぶりです! お元気ですか? 私は元気です!
すみません、すみません、すみません。
先に謝っておきますねー。
はい、始まりました。新章突入です。
いやー、番外編はともかく、まさかまた贖いシリーズでアナザーを書くとは思わなんだ。
晩ごはん作っててキャベ千作ってるときにふと思いついたお話です。毎日キャべ千作ってます。キャベツの千切りは胸を大きくするんだよ。(いや、別に、胸を大きくするために食べてるんじゃないんだけど)てか、それどうでも良かったか。
中々長いお話になるかもしれません。
前半は番外編のおさらいみたいな感じでしょうかね。フェインがどう思ってたかとか綴っていたと思う。タイトル通りに回想でした。
あと、再会してから半年程経ってるからか、フェインとウィニエルの距離感がかなり近いです。フェインが謝る時、“すまない”って言いそうだけど、距離が近い関係なので、“ごめん”になってます。
微エロでした。ていうか、最後までさせる気なくてすまんこってす。
次回はエロ本番いってみます!
今後のストーリー展開は読んでのお楽しみってことで詳しくは書きませんが、新しい天使が登場予定。
以上ネタこぼしでした。
読んでいただきありがとうございます!